Mansonらは、5月7日Journal of the American Medical Associationにて「葉酸とビタミンBサプリメントは、ホモシステイン値を減少したが、心血管系イベントはビタミン投与群とプラセボ群において有意差はなかった」と報告した。
Mansonは、この研究について「今まで実施されてきた研究の中で、一番フォーローアップ期間が長く、また女性を対象とした最大規模の研究である」と述べている。また、今まで行われてきた研究は、心臓発作、脳梗塞、その他心血管病の病歴を持つ者を対象としていたが、今回Mansonらが実施した研究には心血管病(CVD)の病歴がない女性も多数含まれた。
研究に参加した女性医療従事者5442人のうち半数がビタミン投与群に含まれ、葉酸(2.5mg)、ビタミンB6(50mg)、そしてビタミンB12(1mg)を含有する合剤を毎日摂取した。残りの参加者は、プラセボ群に含まれた。
開始から7年4ヶ月の間、ビタミン投与群では14.9%の女性がCVDを発病した。プラセボ群の数値もほぼ同じで、14.3%の女性がCVDを発病した。
CVE予防を目的に使用されるべきではない
現在も進行中の研究はあるが、それらは高血中ホモシステイン値とCVDの関連性を示唆する過去の研究結果に基づいている。しかし、今回得た最新結果は、「血中ホモシステイン値を減少させるとCVD予防に有益であるという仮説を否定している。葉酸サプリメントは、CVDの予防目的に使用されるべきではない」とMasonは語る。
しかし、葉酸不足は、胎児に障害をもたらす可能性があることが知られている。Masonも妊婦は葉酸サプリメントを通常の食事に追加で摂取することを推奨している。葉酸は緑黄色野菜、柑橘系フルーツ、レバーに多く含まれており、米国や他の先進国では、パンやその他穀物製品に葉酸が添加されている。
心血管系イベントのリスクと心血管病のリスクが高い女性の死亡率に対する葉酸とビタミンBの効果:ランダム化プラセボ対照比較試験
Christine M. Albert, MD, MPH; Nancy R. Cook, ScD; J. Michael Gaziano, MD, MPH; Elaine Zaharris, BA; Jean MacFadyen, BA; Eleanor Danielson, MIA; Julie E. Buring, ScD; JoAnn E. Manson, MD, DrPH
JAMA. 2008;299(17):2027-2036.
目的:
発病リスクの高い女性のCVDリスクに対する葉酸(2.5mg)、ビタミンB6(50mg)、ビタミンB12(1mg)を含む合剤の有効性を評価。
デザイン:
米国におけるランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験
CVD歴がある女性、もしくは冠危険因子が3つ以上ある42歳以上の女性医療従事者5442人が含まれた。葉酸(2.5mg)、ビタミンB6(50mg)、ビタミンB12(1mg)を含む合剤とプラセボが使用された。期間は、1998年4月から2005年7月。
主要結果判定法:心筋梗塞、冠動脈再建術、CVD死亡率
結果:796人の女性がCVDを発病(ビタミン投与群:406人、プラセボ群390人)
ビタミン投与群とプラセボ群はCVD主要エンドポイントにて類似リスク
ビタミン投与群226.9/10 000 person-years対プラセボ群219.2/10 000 person-years; 相対危険率(RR), 1.03; 95%信頼区間(CI), 0.90-1.19; P = .65
二次的結果においても類似リスク
心筋梗塞:34.5/10 000 person-years 対39.5/10 000 person-years;RR, 0.87; 95%CI, 0.63-1.22; P = .42)
卒中:41.9/10 000 person-years対36.8/10 000 person-years;RR, 1.14; 95%CI, 0.82-1.57; P = .44
CVD死亡率:50.3/10 000 person-years対49.6/10 000 person-years;RR, 1.01; 95%CI, 0.76-1.35; P = .93
血液サブ研究にて、人口動態平均血中ホモシステイン濃度はビタミン投与群はプラセボ群比較にて18.5%(95%CI 12.5%-24.1%; P<0.001)で、その値は 2.27 µmol/L (95%CI, 1.54-2.96 µmol/L)
表1.葉酸およびビタミンBをランダム投与したWAFACSの累積CVD件数。WAFACS: Women's Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular Study[女性に対する抗酸化物質・葉酸を使用した心血管研究]
表2. 葉酸・ビタミンB6・ビタミンB12治療対プラセボ治療の臨床結果の相対危険度
結論:葉酸とビタミンBサプリメントは、ホモシステイン値を減少したが、心血管系イベントはビタミン投与群とプラセボ群において有意差はなかった。
英語文献
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/299/17/2027