妊娠高血圧腎症について
妊娠高血圧腎症とは、妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧が見られる場合、または高血圧と蛋白尿を伴う場合のいずれかで、且つこれらの症候が偶発合併症によらないものをいう。子宮内胎児発育遅延や胎児ジストレスの発症の可能性がある。また、女性の肝臓、腎臓、脳、血液凝固系の合併症の可能性もある。
妊娠高血圧腎症の原因は?
過量にフリーラジカルが存在すると妊娠高血圧腎症を引き起こす可能性があると考えられている。そのため、フリーラジカルを中和することができるビタミンC、ビタミンE、セレニウム、リコピンなどの抗酸化物質が注目されている。
このレビューは、女性6533名が参加した10試験を含み、幾つかの抗酸化物質を調査した。総体的に、抗酸化物質を使用した結果、妊娠高血圧腎症、高血圧、早産の減少はみられなかった。各抗酸化物質が個別に評価された場合、ビタミンCとE以外はデータが足りないため利害に関する明確な結論は出せなかった。現時点では、妊娠高血圧腎症に対する抗酸化物質の使用をサポートするエビデンスは無いが、進行中の試験が幾つかある。
試験の目的
妊娠中の各種抗酸化物質摂取により、抗酸化物質の有効性と安全性、そして妊娠高血圧腎症及びその他合併症のリスクを評価すること。
検索文献
■Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Register (May 2007)
■Cochrane Central Register of Controlled Trials (The Cochrane Library 2006, Issue 3)
■MEDLINE (1950 to October 2007)
■Current Contents (1998 to August 2004)
採用基準
■妊娠中、1種類以上の抗酸化物質をプラセボもしくは抗酸化物質を使用しない群と比較し、妊娠高血圧腎症のリスクを評価したランダム化比較試験
■数種類の抗酸化物質もしくはその他治療法を比較したランダム化比較試験
主要結果
女性6533名が参加した10試験がこのレビューに含まれ、その内5試験が良質であった。大部分の試験で使用された抗酸化物質はビタミンCとEを組み合わせた治療であった。抗酸化物質群とコントロール群の間における相対危険率(RR)に有意差はなかった(RR 0.73, 95%信頼区間 (CI) 0.51~1.06; 9試験, 5446名)。
下記のその他第一義的転帰においても有意差はみられなかった。
■重篤な妊娠高血圧腎 (RR 1.25, 95% CI 0.89 ~ 1.76; 2試験, 2495名)
■早産(37週間) (RR 1.10, 95% CI 0.99 ~ 1.22; 5試験, 5198名)
■妊娠期間に対して小さい幼児 (RR 0.83, 95% CI 0.62 ~ 1.11; 5試験, 5271名)
■幼児死亡(RR 1.12, 95% CI 0.81 ~ 1.53; 4試験, 5144名)
抗酸化物質を摂取していた女性は下記の傾向があった。
1)妊娠後期に腹部痛を自己報告(RR 1.61, 95% CI 1.11 ~ 2.34; 1試験, 1745名)
2)降圧療法を必要とした(RR 1.77, 95% CI 1.22 ~ 2.57; 2試験, 4272名)
3)高血圧のため出産前に入院(RR 1.54, 95% CI 1.00 ~ 2.39; 1試験, 1877名)
しかし、上記の2)と3)において、その他の高血圧合併症の明確な増加はみられなかった。
著者の結論
このレビューは、妊娠高血圧腎症リスク及びその他重篤な合併症リスクを減少させるために、妊娠中に抗酸化物質を摂取することを支持しない。
Antioxidants for preventing pre-eclampsia.
Rumbold A, Duley L, Crowther CA, Haslam RR. Antioxidants for preventing pre-eclampsia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2007, Issue 4. Art. No.: CD004227. DOI: 10.1002/14651858.CD004227.pub3
リンク
http://www.cochrane.org/reviews/en/ab004227.html