「眠りのスイッチ」の働きをする脳細胞の喪失によって多くの高齢者の入眠障害や不眠が説明できる可能性が示唆された。米ベス・イスラエル・メディカルセンター(ボストン)のClifford Saper氏らの研究で、研究論文が「Brain」オンライン版に8月20日掲載された。
アルツハイマー病患者では、睡眠障害が特に重症で、夜間の錯乱や徘徊に結びつくことが多い。
Saper氏らは、約1,000人を対象としたラッシュ記憶・加齢プロジェクトのデータを分析した。被験者は65歳で登録してから死亡まで追跡され、死亡時に研究のため脳を提供した。
分析の結果、高齢者およびアルツハイマー病患者では腹外側視索前野ニューロンが大幅に減少しており、この脳細胞の喪失が睡眠障害と関連していた。睡眠不足や断片的な睡眠は、思考・記憶障害、血圧上昇や血管疾患の増加、2型糖尿病の発症傾向など多数の健康障害と関連することから、このニューロンの喪失はこれらの疾患にも寄与していると思われる。
Saper氏によると、この研究結果はヒトの腹外側視索前野が入眠に重要な役割を果たすことを示している。同部位のこの機能は、これまでに他の動物では示唆されてきたが、ヒトでのエビデンスは本研究が初めてだという。
「70代の睡眠時間は20代に比べて平均約1時間少ない。このニューロンの減少が高齢者に睡眠障害が多い理由だと考えられ、高齢者の睡眠障害をなくし、認知症患者の睡眠不足に関連する認知力低下を予防する新しい方法につながる可能性がある」とSaper氏は述べている。
The U.S. National Library of Medicine has more about age-related changes in sleep.
SOURCE: Beth Israel Deaconess Medical Center, news release, Aug. 20, 2014