2014年11月 9日 00:13
   

妊娠した女性に潰瘍性大腸炎でよく用いられる治療法を行うと、出生時に乳児が感染症に抵抗する能力が低下する可能性があることが、新たな研究で示唆された。

フランス、ジャン・ヴェルディエ病院(ボンジー)のLoic de Pontual氏らによるこの知見は、「Pediatrics」10月号に掲載された。

この治療法は抗TNF療法と呼ばれるもので、人工抗体を注射する。関節リウマチや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)などの自己免疫疾患に広く使用されているものだ。炎症性腸疾患は出産年齢の女性に多いため、妊娠した女性がこの治療を受けることは珍しくない。しかし、この薬剤は胎盤を通過して胎児に到達することがあるという。

フランスで妊娠中に抗TNF薬レミケード(一般名:インフリキシマブ)に曝露した4症例から、この治療が新生児の好中球減少症を引き起こす可能性が示唆されると研究著者らは述べている。

米国クローン病・腸炎財団(CCFA)によると、米国で70万人が罹患しているとされる潰瘍性大腸炎は免疫系の異常による疾患で、腸内層の重度の炎症により著しい腹部不快感や腹痛とともに持続的な下痢が生じる。米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部(シカゴ)のStephen Hanauer氏によると、インフリキシマブは炎症性疾患で過剰産生される化学物質TNFを中和する薬剤であり、きわめて効果が高く、一般には非常に安全だという。

今回報告された4症例のうち1例は、母親(24歳)が妊娠前に2年間インフリキシマブの投与を受けており、妊娠27週ごろに治療を中止した。残りの3例は、三つ子を妊娠した28歳の女性が同じく妊娠27週までインフリキシマブによる治療を受けていた。いずれも生後数日から数週間以内に乳児が中等度または重度の好中球減少症を発症し、抗生物質により8~14週以内に完全に回復した。

研究グループは、このような症例では出生時および生後数週間にわたり白血球検査を実施する必要があることが示唆されたと述べている。

一方、米国の専門家らは、妊娠中にこの薬剤を服用しなかった場合、流産や早産のリスクがあると指摘する。Hanauer氏は、「今回の知見を軽視するつもりはないが、米国ではこのような症例はこれまで報告されていないため、再確認する必要がある」と述べている。本報告を行ったフランスの研究グループも、さらに研究を重ねる必要があることを認めており、「大多数の症例では、妊娠中の抗TNF(-α)薬はベネフィットがリスクを上回る」としている。


Visit the Crohn's & Colitis Foundation of America for more on ulcerative colitis.

SOURCES: Stephen Hanauer, M.D., professor, medicine, and director, digestive health center, Northwestern University's Feinberg School of Medicine, Chicago; Jonathan Ramprasad, M.D., pediatric gastroenterologist, McLane Children's Scott & White Hospital, Temple, Texas; October 2014, Pediatrics