2014年11月 9日 00:23
  

一部の乳がん患者に対し、標準の化学療法に加えてハーセプチン(トラスツズマブ)を1年間投与すると、化学療法単独に比べて全生存率が増大し、再発リスクが低減することが新たな研究で示された。ハーセプチンの追加で全生存率が37%向上したほか、10年全生存率が75%から84%、10年無病生存率が62%から74%に向上した。

研究著者である米メイヨー・クリニック(フロリダ州、ジャクソンビル)のEdith Perez氏によると、研究対象としたのはHER2陽性と呼ばれるタイプの乳がん患者だ。浸潤性乳がんの最大20%がHER2陽性であるという。過剰なHER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)は乳がん細胞の増殖を促進するが、ハーセプチンはHER2蛋白を標的としてがん細胞の増殖を阻止することにより効果を発揮する。今回の研究は「Journal of Clinical Oncology」オンライン版に10月20日掲載された。

ハーセプチンにより転帰を改善できる可能性を示した研究は、2005年に初めて報告されたという。今回のレビューでは、このような大規模研究のうち2件の情報を統合し、最新の知見を示した。4,000人超の乳がん女性の半数に化学療法を実施し、残りの半数には1年間のハーセプチン治療を追加した。追跡期間の中央値は8.4年だった。その結果、ハーセプチンの追加により全生存率が37%向上し、無病生存率が40%向上した。また、ハーセプチンの有効性だけでなく、その便益の持続可能性も示されたとPerez氏は述べている。

なお、心臓障害とハーセプチンの関連が従来の研究で認められているが、今回のレビューによると、ハーセプチン投与群の0.2%に心臓関連死がみられたのに対し、投与していない群では0.1%であり、心臓障害の増大はわずかであることがわかった。また、患者の年齢を問わず、エストロゲン受容体陽性(エストロゲンを利用してがんが増殖する)か、リンパ節転移かにもかかわらず、ハーセプチンが有益であることもわかった。

米シティ・オブ・ホープがんセンター(カリフォルニア州デュアルテ)のJoanne Mortimer氏によると、薬剤によっては最初だけ効果があり、その後効果が失われるものもあるが、今回の結果は生存率に持続的な効果があることを示すものだ。しかし、このような便益はコストなしに得ることはできない。ハーセプチンは1年の治療コースで約6万4,000ドルという高額な費用がかかる。製造元のGenentech社は、支払いの困難な患者には補助を提供しているという。


To learn more about Herceptin, visit BreastCancer.org.

SOURCE: Edith Perez, M.D., researcher, Mayo Clinic, Jacksonville, Fla.; Joanne Mortimer, M.D., director, Women's Cancer Programs, City of Hope Cancer Center, Duarte, Calif.; Oct. 20, 2014, Journal of Clinical Oncology, online