2014年12月 6日 23:19

加齢性黄斑変性は、網膜の中でも感度が高い黄斑部の機能が低下するもので、視野の中央部が見えなくなり、最終的には失明に至ります。その発生形態には、乾燥型と湿潤型の両方があります。乾燥型のほうがよく見られますが、これは網膜の奥に細胞残屑が沈着するもので、網膜剥離につながることがあります。湿潤型のほうが重症で、これは網膜の奥で血管が増殖し、血液と体液が漏れるものです。乾燥型では、ドルーセンと呼ばれる黄色い沈着物が、高コレステロールに関係付けられています。

何年にもわたり、加齢性眼疾患研究(AREDS)が継続的に行われていて、4月には第35号報告書が発表されました。この研究では、様々な重症度の加齢性黄斑変性患者4,757人が被験者として登録され、プラセボを与えるグループか、AREDSでの処方による抗酸化物質のビタミンC・ビタミンE・β-カロテン、および(または)亜鉛を与えるグループのいずれかに分けられました。そして毎年、網膜の写真撮影と視力検査による目の検査を行いました。(Chew EY, et al., Long-term effects of vitamins C and E, β-carotene, and zinc on Age-Related Macular Degeneration: AREDS Report No. 35. Ophthalmology. 2013 Apr 10.)

上記の栄養剤には、ビタミンCが500 mg、ビタミンEが400 IU、β-カロテンが15 mg、亜鉛が80 mg含まれていました。有効なサプリメントを摂っていたグループでは、プラセボのグループと比較して、進行性の加齢性黄斑変性を発症するリスクが34~40%低くなっていました。軽度の視野欠損の発生リスクも、29%低くなっていました。AREDSでの処方には、何の副作用も見られませんでした。また、亜鉛のサプリメントが割り当てられたグループでは、死亡率、とくに、循環器疾患に関係した死亡率が低くなっていました。

【コンクルージョン


AREDSによる処方には、適量の抗酸化物質と大量の亜鉛が含まれています。亜鉛は、この処方のとくに重要な成分であると思われます。ビタミンEを摂る場合は、合成のビタミンE(dl-α-トコフェロール)ではなく、天然処方のビタミンE(d-α-トコフェロール)をお勧めします。α-トコフェロール、β-トコフェロール、δ-トコフェロールの他にも、γ-トコフェロールをかなり多く含む処方のものもお勧めします。

喫煙者の場合、50,000 IUのβ-カロテンサプリメント摂取には、肺ガンのリスク増加との関連が見られています。喫煙経験者にもこれが当てはまるかどうかは不明です。AREDSでの処方には、15 mgのβ-カロテンが含まれており、これは25,000 IUに相当します。ルテイン、リコピン、ゼアキサンチンなど、他のカロテノイドに喫煙者はもっと用心しなければならない可能性もあります。しかし、黄斑変性の発症と進行にとっては、喫煙そのものが重大な危険因子なのです。

健康に良いマルチビタミンサプリメントの多くには、上記のような量のビタミンC、ビタミンE、β-カロテンが含まれています。天然のカロテンには、α-カロテンに加え、他の形態のカロテンも少量含まれています。マルチビタミン・ミネラル剤の処方では、亜鉛の量が80 mgを下回っていることが多いため、追加のサプリメントが必要となる場合もあります。