2015年1月13日 21:38
  

乳がんの進行を阻止する実験段階のワクチンの安全性が示された。女性14人を対象とする小規模な予備的試験によるもので、研究結果は「Clinical Cancer Research」12月1日号に掲載された。研究著者は、「マンマグロビン-Aと呼ばれる蛋白を標的とするこのワクチンは安全であり、患者の免疫応答を促す作用もあるという自信がある」と述べている。

乳がん患者の最大80%にマンマグロビン-Aの過剰発現がみられるという。このワクチンは、特定の白血球がこの蛋白を見つけて除去するように促すもの。今回の研究では「進行がん」に分類された患者(つまり、免疫機能を低下させる化学療法を受けた経験がある患者)を対象とした。ただし、ワクチン接種前の1カ月間に化学療法を受けた患者はいなかった。

1年後、ワクチンの副作用は最小限にとどまり、発疹、圧痛、軽度のインフルエンザ様症状などがみられた。また1年後の無増悪生存率(がん進行の徴候が見られなかった確率)は、被験者群では約50%だったが、類似する集団12人では20%であった。

理論上は、まだ化学療法を受けていない患者にこのワクチンを接種すれば、さらに高い効果が認められる可能性があると研究グループは述べている。研究著者の1人である米ワシントン大学医学部(セントルイス)のWilliam Gillanders氏は、「今回の試験はその点について検討したものではないため、現時点で結果を解釈するのは難しい。しかし、乳がんをはじめとするがん予防ワクチンの開発には大きな関心がもたれており、この研究はそのような戦略の有望性を裏付けるものである」とGillanders氏は話す。

米シティ・オブ・ホープ総合がんセンター(カリフォルニア州)助教授のCourtney Vito氏によると、ヒトの細胞には複製に問題があった場合に自滅するという独自の機構があるが、それが上手く働かない場合、次の防衛線となるのが免疫系である。「1個のがん細胞が、自滅を逃れ、さらに免疫系からも逃れたときに腫瘍が発生する」と同氏は説明し、「乳がん細胞に対して免疫系を亢進させるということは、副作用なく自然本来の防衛線を増強することであり、今回の試験でもそのことが示されている」と付け加えている。

米ミシガン大学医学部(アナーバー)准教授のSarah Hawley氏は、「転移乳がんに対する優れた治療は存在しないため、今回の結果は期待をもたせるものである」と述べ、今後の試験で今回の結果を再現できれば、乳がん治療研究の分野において重要な方向性を示すものとなると結論付けている


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SOURCES: William Gillanders, M.D., professor, surgery, and vice chairman, research, department of surgery, Washington University School of Medicine and Alvin J. Siteman Cancer Center at Barnes-Jewish Hospital, St. Louis; Courtney Vito, M.D., breast surgeon and assistant clinical professor, surgical oncology, City of Hope Comprehensive Cancer Center, Duarte, Calif.; Sarah Hawley, Ph.D., M.P.H., associate professor, internal medicine, University of Michigan Medical School, Ann Arbor, and research investigator, Ann Arbor VA Health System; Dec. 1, 2014, Clinical Cancer Research