2015年1月13日 21:43

米国立衛生研究所(NIH)による早期臨床試験で、実験段階のエボラワクチンの安全性とウイルスに対する防御効果の可能性が認められたという。この第I相試験の成功により、エボラ出血熱が流行する西アフリカで1月にも現地試験を実施する道が開かれたと、NIH国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のAnthony Fauci氏は述べている。

「New England Journal of Medicine」11月26日号に掲載された今回の研究では、NIH臨床センター(メリーランド州ベセスダ)で、9月に健康な成人ボランティア20人にこのワクチンを接種したところ、主な副作用はみられなかった。また、このワクチンにより、サルの実験で効果が得られた例に類似する免疫システム反応がヒトにも認められた。「第I相試験としては成功といえる」と、Fauci氏はいう。

NIAID およびグラクソ・スミスクライン社が開発したこのワクチンは、チンパンジー由来アデノウイルスと呼ばれるウイルスに基づくもの。エボラの遺伝物質の一部をこのウイルスに挿入することにより、身体をウイルス自体に曝露させることなく、免疫システムにエボラウイルスを攻撃する抗体を産生させた。

今回の臨床試験では、18~50歳のボランティアを対象に、10人に低用量、別の10人に高用量のワクチンを注射した。1日以内に高用量群2人に発熱がみられたが、短時間で、容易に対処できるものであったという。4週間以内に全員に抗体の産生がみられたが、抗体値は高用量群のほうが高かった。

英国およびマリでもこのワクチンについて2件の第I相試験が進められているが、今回の試験の成功に基づき、2~3カ月以内にリベリアやシエラレオネでこのワクチンの使用を開始できればと研究グループは期待している。現地試験でどのくらいの患者にこのワクチンを投与することになるかはわからないが、「有効性を判定するには数百人ではなく数千人に接種する必要がある」と、Fauci氏は述べている。

カナダ公衆衛生庁が製造するもう1つのワクチンは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)と呼ばれる牛や馬にみられるウイルスに基づくもので、第I相試験が進められている。米テキサス大学医学部教授のThomas Geisbert氏は、このVSVベースのワクチンのほうが効果や持続期間の面で優れる可能性があるとの考えを示しており、「安全性が確認されれば、最有力候補となると考えられる」と述べている。


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For more on Ebola virus, visit the U.S. Centers for Disease Control and Prevention.

SOURCES: Anthony Fauci, M.D., director, U.S. National Institute of Health's National Institute of Allergy and Infectious Diseases; Amesh Adalja, M.D., senior associate, Center for Health Security, University of Pittsburgh Medical Center; Thomas Geisbert, Ph.D., professor, microbiology and immunology, University of Texas Medical Branch, Galveston; Nov. 26, 2014, New England Journal of Medicine