2015年2月11日 18:29


コエンザイムQ10(coQ10)は、ミトコンドリア内でのエネルギー貯蔵分子(ATP)の生成における補因子の一つです。coQ10は体内で生成されるため、必須栄養素ではありませんが、その生成量は年齢とともに減少するため、十分な組織内濃度を維持するためには、サプリメントが唯一の手段かもしれません。

心筋には、とくにミトコンドリアが多く含まれているため、十分な量のcoQ10に大きく依存しています。coQ10は、強力な抗酸化物質であり、高血圧症の治療におけるその効果について、以前にお伝えしたことがあります。coQ10は、糖尿病、心不全、狭心症、慢性疲労の治療にも用いられていますが、その研究の中には、規模が小さすぎて決定的な答えを出すことができないものもいくつかあります。

ある学会発表からの報告では、coQ10療法が心不全患者に有意な効果をもたらすことが示唆されていました。これは多くの報道機関によって伝えられましたが、まだ雑誌には掲載されていません。心不全患者への効果については、症状の軽減、機能的能力の改善、ならびに生活の質の向上をもたらすことが、以前の複数の研究でわかっています。

今回のQ-SYMBIO研究1は、重度(ニューヨーク心臓病協会(NYHA)分類のクラスIIIまたはクラスIV)の心不全患者420人に、100 mgのcoQ10を1日3回、もしくはプラセボを投与したもので、2年間にわたり、心臓の重大有害事象という主要評価項目について被験者の評価を行いました。この事象には、心不全の悪化による予想外の入院、心血管系死亡、緊急心臓移植、および機械的循環補助が含まれました。

(S.A. Mortensen, et al., The effect of Coenzyme Q10 on morbidity and mortality in chronic heart failure. Results from the Q-SYMBIO study. European Society of Cardiology Conference, May 2013; Abstract no 440)

上記の研究は、被験者における全死亡率を分析することができたという点で、心不全におけるcoQ10の効果を示したメタ分析のさらに先を行っています。調査開始から2年後の時点で、心血管系の重大有害事象の割合が、プラセボグループでは25%であったのに対し、coQ10を摂ったグループでは14%に過ぎませんでした。また、プラセボグループと比較して、coQ10を摂ったグループのほうが、心血管系死亡率と入院率が低く、NYHA分類における改善率が高くなっていました。

全死因死亡率は、プラセボグループで17%であったのに対し、coQ10グループでは9%でした。これは劇的な差です。もちろん、研究の規模がもっと大きく、調査時間がもっと長ければ素晴らしいのですが、coQ10の安全性は知られており、他にも効果があることから、心不全患者にcoQ10を用いる価値があることは間違いありません。


【コンクリュージョン】

お勧めは、還元型コエンザイムQ10(ユビキノール)です。

還元型コエンザイムQ10は、それを表す 「QH」という商品名で販売されており、いくつかのサプリメント剤メーカーから入手することができます(その価格は多岐にわたります!)。

通常、1日200 mg摂るよう勧めていますが、たとえ1日1,200 mg以上摂っても効果がある(そして安全である)ことが、数々の研究でわかっています。