2015年3月13日 15:57


閉経後に5年未満のホルモン補充療法を受けた女性では、卵巣がんリスクが40%上昇することが新たな研究で明らかにされた。研究を実施した英オックスフォード大学(イングランド)教授のSir Richard Peto氏は、「ホルモン療法の利用により、わずかながら確かな卵巣がんリスクがあることの根拠が得られた」と述べている。

Peto氏によると、リスクの上昇は統計的に有意だったが、リスクそのものは小さく、50歳前後から5年間ホルモン療法を受けた女性の場合、卵巣がんの診断が1,000人に1人、卵巣がんによる死亡は1,700人に1人、増加すると予想されるという。

なお、今回の研究は因果関係を明らかにするものではない。ホルモン療法が卵巣がんに寄与する可能性が高いのは確かだが、その機序はわかっていないとPeto氏らは述べている。この研究は「The Lancet」オンライン版に2月13日掲載された。

米国がん協会(ACS)によると、米国では今年2万1,000人を超える女性が卵巣がんと診断され、1万4,000人が死亡すると予想されている。閉経期の症状を緩和するホルモン補充療法の利用は、1990年代に劇的に増加したが、2002年にはホルモン療法の利用者に心筋梗塞、脳卒中、血栓のリスク上昇が認められたことから研究が中止され、同治療の利用も減少した。しかし、現在も英国および米国だけで約600万人がホルモン療法を受けており、医師らは治療期間をできるだけ短期間とするよう助言している。

今回の研究では、計1万2,000人を超える卵巣がん患者を対象とする52件の研究結果を統合。約半数がホルモン補充療法を受けていた。ホルモン療法利用者のリスク上昇は、米国とヨーロッパにおいて同程度だった。エストロゲン・プロゲステロン補充とエストロゲン単独補充の内訳にも差はみられなかった。治療によるリスク上昇が認められたのは、4タイプの卵巣がんのうち、特に多い漿液性がんおよび類内膜がんの2つのみだった。卵巣がんリスクに関しては、治療期間が5年未満でも安全とはいえないとPeto氏は話す。

なお、ホルモン療法による卵巣がんリスクの上昇は、同治療による乳がんリスクの上昇よりは小さかった。また今回の知見はあくまで閉経後のホルモン療法に関するものであり、ホルモン避妊薬はむしろ卵巣がんリスクを低減するとPeto氏は指摘している。

別の専門家は、今回の知見だけから治療決定が左右されるべきではないとする一方、乳がんリスクを最小限に留めるためにも、治療は必要な場合にのみ、できるかぎり低用量・短期間で実施すべきだと述べている。

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To learn more about ovarian cancer, visit the American Cancer Society.

SOURCES: Sir Richard Peto, F.R.S., professor of medical statistics and epidemiology, University of Oxford, England; Robert J. Morgan, M.D., professor of medical oncology, City of Hope Comprehensive Cancer Center, Duarte, Calif.; Feb. 13, 2015, The Lancet, online

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