2015年4月10日 19:29
  

アセトアミノフェンはこれまで考えられていたほど安全ではなく、長期にわたり多量に使用すると健康リスクが上昇するという、新たな研究報告が行われた。タイレノールの商品名で知られるアセトアミノフェンは、アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)よりも安全であると考えられている。

しかし、研究の筆頭著者である英リーズ大学リウマチ・筋骨格医学研究所(イングランド)教授のPhilip Conaghan氏によると、一部の研究ではその安全性への疑問が提起されているという。アセトアミノフェンの多量使用は、腎疾患、消化管出血のほか、心筋梗塞、脳卒中、高血圧のリスク上昇との関連がみられると、今回の論文では報告している。ある研究では、同薬の過剰な使用により早期死亡リスクが60%増大する可能性も示されているという。研究著者らは、同薬の新たな系統的レビューが必要だと述べている。

今回の研究では、アセトアミノフェンの使用に関連する1,888件の研究をレビューし、米国、英国、デンマーク、スウェーデンで計66万5,000人以上を対象とする8件の研究を選定した。

しかし、タイレノールの製造元である米マクニール・コンシューマー・ヘルスケア社は、この研究が臨床試験ではなく、患者の自己申告に基づいている点を指摘している。声明のなかで、同社は安全かつ有効な市販薬の提供に専心していると述べ、消費者には常に製品ラベルをよく読み、それに従うよう勧告している。各研究は観察研究であるため、アセトアミノフェンと健康問題との因果関係を明らかにするものではない。

米ノースカロライナ大学(チャペルヒル)名誉教授のNortin Hadler氏は、慢性腎疾患患者は痛みを治療するために同薬を服用しているのであり、同薬が原因で腎疾患を発症したわけではないと指摘する。著者らによると、認められた健康問題には他の鎮痛薬や薬剤が寄与している可能性もあるという。各研究の患者の追跡期間には2年から20年までの幅があり、アセトアミノフェンの使用量の算出方法にもばらつきがあるため、「安全」な用量について結論を導くことはできないとConaghan氏は述べている。

Conaghan氏は、筋力トレーニング、運動および減量など、疼痛管理に有効とされる生活習慣の改善にもっと着目してほしいと述べる一方、そのような方法は服薬ほど簡単ではなく、魅力的でもないのが問題だと付け加えている。今回の論文は「Annals of the Rheumatic Diseases」オンライン版に3月2日掲載された。


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SOURCES: Philip Conaghan, M.B.B.S., professor, Leeds Institute of Rheumatic and Musculoskeletal Medicine, University of Leeds' Chapel Allerton Hospital, United Kingdom; Robert Wergin, M.D., family physician, Milford, Neb., and president, American Academy of Family Physicians; Nortin Hadler, M.D., emeritus professor, medicine, University of North Carolina at Chapel Hill; McNeil Consumer Healthcare, statement, March 2, 2015; March 2, 2015, Annals of the Rheumatic Diseases, online