2015年4月10日 19:31
  

乳がんの化学療法の副作用として一部の患者に早期閉経がみられることがあるが、ゴセレリンと呼ばれる薬剤を追加することにより、その確率を低減できることが新たな研究で示された。この研究は米国立がん研究所(NCI)の支援により実施されたもので、「New England Journal of Medicine」3月4日号に掲載された。

研究著者で米ロヨラ大学乳がん臨床研究プログラム代表のKathy Albain氏によると、「若い乳がん患者にとって、化学療法の最も悩ましい副作用の一部が早期の急な閉経と不妊である」という。

米ノースショア大学病院(ニューヨーク州)のがん専門医George Raptis氏もこれに同意し、「われわれは数十年前から閉経前の女性に化学療法を実施している。これにより転移リスクを低減し、全生存率を向上させることができる。しかし、多くの若い女性が乳がんを克服する一方、治療が原因で不妊になる」と説明している。

今回の研究では、早期乳がんと診断された50歳未満の閉経前の女性257人を対象として、標準化学療法を実施する群と、化学療法にゴセレリン(商品名:ゾラデックス)を追加する群のいずれかに無作為に割り付けた。2年後、標準治療群の22%に月経の停止またはエストロゲン産生と卵子供給の低下がみられたのに対し、ゴセレリン群では8%にとどまった。また、妊娠率はゴセレリン群で21%、標準治療群で11%であった。

Albain氏によると、ゴセレリンは化学療法の間、一次的に卵巣を「休眠」状態にすることによって生殖能力を保護する効果を発揮するという。早期閉経やそれに伴う症状を低減するだけでなく、ゴセレリンはきわめて安全であり、生存率を向上させる可能性もあるという。4年後の時点でがんの徴候や症状がみられなかった比率はゴセレリン群で89%、標準治療群で78%であり、4年後の全生存率はゴセレリン群92%、標準治療群82%であった。

今回の研究はエストロゲン・プロゲステロン受容体が陰性の乳がん患者が対象であり、この知見を受容体陽性乳がんの患者に一般化できるかどうかは不明であるとRaptis氏は指摘している。それでも、この研究は化学療法を受ける多くの女性の生活を向上させる可能性があると同氏は述べている。

米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のStephanie Bernik氏もこれに同意し、ゴセレリンにより副作用なく早期閉経が低減されただけでなく、生存率向上も認められた今回の研究は非常に有望なものだと述べている。


More information

The U.S. National Cancer Institute has more about breast cancer treatment.

SOURCES: George Raptis, M.D., associate chief, hematology/oncology, North Shore University Hospital, Manhasset, N.Y. and Long Island Jewish Medical Center, New Hyde Park, N.Y.; Stephanie Bernik, M.D., chief, surgical oncology, Lenox Hill Hospital, New York City; Loyola University Health System, news release, March 4, 2015