2015年5月14日 16:33
  

カナダの8歳男子の症例から、まれではあるが、小児が輸血を受けることにより食物アレルギーになる可能性があることが示唆されている。

カナダ、トロント小児病院のJulia Upton氏率いるチームによると、この男児は、魚およびピーナッツに対する重度のアレルギーをもつドナーの提供した血液を輸血された後、この2つの食品へのアレルギーを発症したという。アレルギー反応は即座に治療され、数カ月でアレルギーは自然に消失したと研究グループは報告している。

Upton氏らは「Canadian Medical Association Journal」4月7日号のなかで、食物アレルギーをもつドナーにより、アレルギーを誘発する免疫グロブリンE (IgE)と呼ばれる抗体が、血小板などの血液製剤を通して伝達される可能性があると説明している。まれではあるが、血液製剤の投与を受けた小児がそれまで問題のなかった食品に対して突然アレルギーを発症する可能性があると、親や医師は知っておく必要がある。ただし、「過剰に心配する必要はない。この症状の予後は極めて良好であり、一般に数カ月で消失する」とUpton氏は強調している。

米ノースショア大学病院血液バンク(マンハセット)のLennart Logdberg氏は、このような「受動伝達」された抗体は「患者自身の免疫系によって作られた抗体とは異なり、長くても数カ月で身体により破壊される」と述べ、「アレルギーの受動伝達はまれであり、予後も良好であるため、血液バンクでは献血時に症状が出ていない限りドナーのアレルギー検査は実施していない」と付け加えている。ノースショアLIJ ヘルスシステム(グレートネック)のSherry Fazan氏は、「(男児の)自身の免疫系により食物特異的IgEが補充されることはなかったため、男児は次第にアレルギーから脱した」と説明する。

Upton氏によると、輸血後に小児がアレルギーを発症した場合、医師は数カ月経過を観察し、アレルギーを引き起こす食品の摂取を再開する時期を判断する必要があるという。また、保健当局が原因を調査し、輸血用血液の安全性を徹底できるよう、医師は輸血に関連する食物アレルギーの症例についてもれなく報告することが重要だと同氏は述べている。


More information

The American Academy of Family Physicians has more about food allergies.

SOURCE: Lennart E. Logdberg, M.D., medical director, Blood Bank, North Shore University Hospital, Manhasset, N.Y.; Sherry Farzan, M.D., allergist and immunologist, North Shore - LIJ Health System, Great Neck, N.Y; Canadian Medical Association Journal, news release, April 7, 2015