2015年5月14日 16:27
 

アセトアミノフェン(商品名:タイレノールなどとして知られる)には、腰痛を緩和する効果は認められず、関節炎を軽減する効果もほとんどないことが新たな研究で報告された。

オーストラリア、シドニー大学ジョージ・グローバルヘルス研究所のGustavo Machado氏率いる研究チームは、アセトアミノフェンによる変形性股関節症および変形性膝関節症の治療について検討した10件の研究と、同剤による腰痛治療について評価した3件の研究を分析した。

変形性関節症および腰痛は、世界的に身体障害の主要な原因となっているという。現行の臨床ガイドラインでは、これらの症状に対する治療にアセトアミノフェンを第一選択薬として推奨している。

しかし、同薬の有効性に対する疑問および推奨される用量(1日最大4,000mg)の安全性に関する懸念から、このガイドラインには賛否があったという。

データを検討した結果、腰痛患者において、アセトアミノフェンは身体障害の軽減とQOL向上のいずれの面でも効果は認められなかった。変形性股関節症および変形性膝関節症の患者でも、同薬の効果はわずかであり、痛みや身体障害の軽減において臨床的に重要な便益はみられなかった。

タイレノールの製造元であるMcNeil Consumer Healthcare社は、アセトアミノフェンの安全性および有効性は50年にわたる150件を超える研究によって裏付けられたものであると反論している。また、米マウント・サイナイ医科大学(ニューヨーク)のHouman Danesh氏は、腰痛にはさまざまな要因があるとし、すべてを「腰痛」としてまとめてしまうことに問題があると指摘している。

米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のAllyson Shrikande氏は、「筋力を強化する運動により、変形性膝関節症の痛みが軽減することが明らかにされている」と述べ、経口薬の前に患者個人に合わせた理学療法プログラムをまず試すべきだと指摘している。Danesh氏も、薬は必要ない場合もあると同意している。実際に今回の研究では、腰痛治療において鍼治療・禁煙・減量・運動・人間工学に基づいた適切な職場環境などの方法にも、(同薬と)同等の効果があることが示唆されていると同氏は述べている。

安全性の問題も浮上しているが、専門家らは、もし治療ガイドラインからアセトアミノフェンが削除されれば、麻薬性鎮痛薬などの他の薬剤の使用が増える可能性があると指摘している。

この知見は「BMJ」に3月31日掲載された.


More information

The U.S. National Library of Medicine has more about acetaminophen.

SOURCES: Allyson Shrikhande, physiatrist, Lenox Hill Hospital, New York City; Houman Danesh, M.D., director of integrative pain management, department of anesthesiology-pain, Mount Sinai School of Medicine, New York City; McNeil Consumer Healthcare, statement, March 31, 2015; BMJ, news release, March 31, 2015