2015年5月14日 16:31
  

魚油サプリメントおよび一部の魚が、がんの化学療法の効果を低下させる可能性が、新たな研究で示された。オランダの研究グループによると、一部の魚油によりがん患者の16:4(n-3)と呼ばれる脂肪酸の血中濃度が増大したという。マウスの実験では、この脂肪酸によってがん細胞に化学療法への抵抗性が生じる可能性が示唆されている。

研究の背景情報によれば、多くの患者ががんと診断された後にサプリメントの利用を始めるが、そのことが抗がん治療を妨げるのではないかとの懸念が広がっているという。

米ファインスタイン医学研究所(ニューヨーク州)のChristine Metz氏は、「細胞の外部被覆の脂肪が変化すると、がん細胞の細胞膜の硬化や流動化がみられ、この脂肪により化学療法薬が細胞に入り込みにくくなったり、細胞外に排出されやすくなったりする」と説明している。

「JAMA Oncology」オンライン版に4月2日掲載されたこの研究は、魚油がヒトにおける化学療法の効果を鈍らせることを裏付けるものではない。また、倫理的理由のため、この仮説を検証する臨床試験は実施されていない。

今回の研究では、オランダがん研究所(アムステルダム)のEmile Voest氏らが、化学療法を受けたがん患者118人の魚油の摂取について調べるとともに、健常ボランティア50人に魚または魚油サプリメントを摂取させた後、脂肪酸の値を評価した。

がん患者のうち35人が定期的に魚油サプリメントを使用しており、13人がオメガ-3脂肪酸を含有するサプリメントを利用していた。推奨摂取量10mlの魚油を摂取した健常ボランティアでは、脂肪酸16:4(n-3)の値の増大がみられた。8時間で正常値に戻ったが、50ml摂取した場合はさらに長い時間を要した。3.5オンス(約100g)のニシンおよびサバを食べた後も16:4(n-3)の血中濃度が増大したが、マグロでは変化はみられず、サケでは短時間の上昇にとどまった。

しかし、化学療法が奏効しない場合でも、魚油が原因だと決めつけるべきではないとVoest氏はいう。「さらに詳細なデータが出るまでは、化学療法の前日から終了後まで魚油を避けるよう患者に助言している」と研究グループは付け加えている。

ある専門家は、がん患者に魚油が有害か、あるいは有益かについての研究は見解の一致をみておらず、魚油が化学療法の効果を増大させることを示す研究もあると指摘している。さらに別の専門家は、今回の研究は魚油の影響についての混乱を解決するには至らないものの、この疑問に関するエビデンスの重要な1ピースとなるものだと述べている。


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For more on supplements and cancer, visit the American Cancer Society.

SOURCES: Dwight Kloth, Pharm.D, director, pharmacy, Fox Chase Cancer Center, Philadelphia; Christine Metz, Ph.D., director, Laboratory of Medicinal Biochemistry, Feinstein Institute for Medical Research, Manhasset, N.Y.; Nagashree Seetharamu, M.D., medical oncologist, North Shore-LIJ Cancer Institute, Lake Success, N.Y.; Len Lichtenfeld, M.D., deputy chief, medical officer, American Cancer Society; April 2, 2015, JAMA Oncology, online