2015年6月14日 11:48
  

標準的な診断よりもはるかに早い段階でがんの発症を示唆するDNAの変化パターンが、初めて特定された。問題となるのは、血液中のテロメアの状態の変化だという。

テロメアとはDNA鎖の末端を保護する「キャップ」で、加齢とともに短くなることから、生物学的年齢の重要な指標と考えられてきた。今回の研究では、がんになる人はテロメアが通常よりも速いペースで老化し始めることが明らかにされた。将来的にがんになる人のテロメアの長さは、15歳上の人と同じ程度まで短縮することがあるという。

「このテロメアの変化パターンを解明すれば、がんを予測するバイオマーカーとなる可能性がある」と、研究の筆頭著者である米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部(シカゴ)予防医学教授のLifang Hou氏は述べ、「このパターンはさまざまながん種で強く関連することが認められたので、正しく検査すれば、最終的には幅広いがん種の診断にこの処置を利用できる可能性がある」と付け加えている。

「EBioMedicine」に掲載された今回の研究では、13年をかけて約800人のテロメアの評価を追跡した。最終的に135人がさまざまながんの診断を受けた。その結果、がんの診断よりもはるかに前の段階でテロメアに著明な短縮がみられる一方、診断のおよそ3~4年前には短縮が止まることを突き止めた。その正確な理由は不明だが、短縮が止まる時期は、患者の未診断のがん細胞が幅を利かせ始める時期に一致する可能性があると同氏らは示唆している。

Hou氏は、「テロメアの急激な短縮が安定化する屈曲点が認められた。また、がんが身体内で勢力を伸ばすためにテロメアの短縮を乗っ取ることがわかった」と説明する。今後は、患者の正常な細胞を傷つけずにがんを阻止する治療の開発を目指し、この乗っ取りプロセスがどのように展開するのかを突き止めたいという。


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For more on telomeres, visit the U.S. National Library of Medicine.

SOURCE: Northwestern University, news release, April 30, 2015