2015年6月14日 14:26


Q10には、他にもいくつかの効果があります。スペインで最近行われたメタ分析によると、心臓切開手術(冠動脈バイパス・グラフト)を受けた患者にも効果があるということです。

このメタ分析は、種々の転帰について別々に分析したもので、転帰には、心臓の収縮を強くする薬剤(強心薬)の必要性や、(最も危険な種類である)心室性不整脈の発生、心房細動の発生、術後24時間の心係数、入院日数が含まれていました。このメタ分析に含める基準を満たしているものとして、全部で8つの臨床試験が見つけ出されました。

Q10による処置を受けた患者グループは、Q10による処置を全く受けなかったグループと比較して、術後に強心薬が必要となる可能性が53%低くなっていました。

心室性不整脈(頻脈や細動を生じるもので、細動は突然死に至るおそれがある)のリスクにも、95%という顕著な低下が見られました。しかし、心係数、入院日数、心房細動の発生という面では、Q10を摂っていたグループでも、摂っていなかったグループでも、変わりはありませんでした。(de Frutos F, et al., Prophylactic treatment with coenzyme Q10 in patients undergoing cardiac surgery: could an antioxidant reduce complications? A systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2014 Oct 24. pii: ivu334. [印刷物に先行した電子出版])

この研究グループが調べた臨床試験のいずれにおいても、Q10による副作用は報告されていませんでした。他の研究では、それよりはるかに多い量のQ10が用いられており、それでも安全であることがわかっている、と研究グループは記載しています。

2008年に公表されたある研究では、重度のうっ血性心不全患者が150~600 mgのQ10(ユビキノン)サプリメントを摂取しても、血中Q10値が有意に上昇しなかったため、十分な反応が得られませんでした。おそらく、吸収性が低いためと思われます。

この研究グループは、進行性心不全(駆出率:22%)である患者7人について調べ、ユビキノールを1日当たり450~900 mg摂る方法に切り替えたところ、血中Q10値が1.6 μg/mLから6.5 μg/mLまで上昇しました。心筋機能の面では、駆出率が22%から39%まで上昇し、心不全の分類クラスがIVからIIになりました。(Langsjoen PH, Langsjoen AM, Supplemental ubiquinol in patients with advanced congestive heart failure. Biofactors. 2008;32(1-4):119-28.)

2年後の時点で、主要有害心イベント(心臓関連の深刻な有害事象)の発生率は、プラセボグループで26%であったのに対し、300 mgのQ10を与えられたグループでは15%となっていました。他のすべての評価項目についても、Q10のサプリメントを摂っていたグループのほうが有意に低くなっていました。この研究の内容は、その後、Journal of the American College of Cardiology(米国心臓病学会ジャーナル)にて公表済みです。(Mortensen SA, et al., The effect of coenzyme Q10 on morbidity and mortality in chronic heart failure: Results from Q-SYMBIO: A randomized double-blind trial. JACC Heart Fail. 2014 Dec;2(6):641-9.)

【コンクリュージョン】

Q10は、ほとんどどのような用量でも摂る価値があります。ただ、かなり費用がかかり、とくにユビキノール型は高価です。心臓疾患や神経障害がある患者さんには、1日100~300 mgという通常用量より多く摂るよう勧めています。また、金銭的な余裕がある人は、ユビキノール型を摂ることをお勧めします。