2015年7月 4日 19:52
  

米国では1972年に農薬DDTの使用が禁じられているが、かつて母親の胎内でDDTに曝露した女性は、乳がんを発症するリスクが高いことが新たな研究で示された。研究著者の1人である米公衆衛生研究所(カリフォルニア州バークレー)のBarbara Cohn氏によると、その影響は他の危険因子(例えば1日2杯のアルコール摂取)にも匹敵するものだという。ただし、因果関係は明らかにされておらず、DDT以外の環境曝露が絡んでいる可能性もあると同氏は強調している。

今回の研究は、カリフォルニア州乳がん研究プログラム(CBCRP)および米国立衛生研究所(NIH)の支援により実施され、「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に6月16日掲載された。

世界では未だDDTが使用されている国もあり、米国では現在50~60代の女性が出生前にDDTに曝露している可能性が高いという。

今回の研究では、米カイザー財団の健康保険に加入する女性を対象に、1959~ 1967年に発生した2万件以上の妊娠例を追跡。この間に9,300人の女児が生まれた。妊娠中および出産直後の母親の血液中のDDT濃度を調べるとともに、生まれた子が52歳までに乳がんを発症したかどうかを2012年まで追跡した。54年の追跡期間中に、乳がんを発症した女性118人と、発症しなかった354人の母親のDDT値を比較した。

その結果、胎内で曝露したDDT濃度が最も高かった群は、最も低い群に比べ、乳がんリスクが3.7倍だった。母親の血中DDT濃度が高いほど、診断時に乳がんが進行している傾向があり、母親の乳がんの既往歴を考慮してもなお強い関連がみられた。

乳がんを発症した女性の大部分(83%)は、増殖にエストロゲンを必要とするエストロゲン受容体陽性乳がんだった。これまでの研究で、DDTには弱いエストロゲン様作用があることが示唆されているが、この関連の背景にある機序はわからないと、Cohn氏は述べている。

DDTが一般に使用されていた頃に生まれた女性が自分の曝露レベルを知る方法はないため、標準の勧告に従ってスクリーニングを受けることを専門家らは勧めている。既知の危険因子と病歴に基づき、乳がんリスクを低減する対策について医師に相談するのがベストだとCohn氏は助言している。

影響は世代を超えて続くことが動物の研究から示唆されているので、Cohn氏らはさらに数世代にわたりリスクの有無を追跡する予定だという
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For more about menopause, visit the U.S. National Institute of Aging.

SOURCES: Sheryl Ross, M.D., F.A.C.O.G., ob-gyn, Providence Saint John's Health Center, Santa Monica, Calif.; Nicole Cirino, M.D., director, Division of Women's Mental Health and Wellness, Oregon Health and Science University, Portland, Ore.; Kevin Ault, M.D., F.A.C.O.G., ob-gyn and professor, Center for Pelvic Pain and Sexual Health, University of Kansas Medical Center, Kansas City, Kansas; June 11, 2015, Psychopharmacology