2015年7月 4日 17:59
  

遺伝子操作した無害のヘルペスウイルスがメラノーマ(黒色腫)の進行を遅らせる可能性が示された。研究グループによると、世界各地の患者436人を対象とした今回の研究は、「ウイルス免疫療法」が有益であることを示した初めての第3相試験だという。

第3相試験は、小規模の集団で安全性と有効性が示された後に実施される、最終的な大規模試験だ。本研究は治療法を開発している製薬会社Amgenから資金提供されており、「Journal of Clinical Oncology」に5月26日掲載された。

この研究では浸潤性の手術不能なメラノーマ患者を対象に、Talimogene Laherparepvec(T-VEC)と呼ばれるウイルス療法または「対照」の免疫療法のいずれかを注射した。T-VECは、単純ヘルペスウイルス1型の2つの遺伝子を除去することにより、正常細胞内では複製されず、がん細胞内で増殖して内側からがん細胞を破裂させるようにしたもの。T-VECはさらに、免疫系を刺激して腫瘍を攻撃させる物質を産生する。

T-VEC群で6カ月を超える治療反応が認められたのは約16%にとどまったが、対照群の2%に比較するとはるかに優れた結果だった。T-VEC群の患者には3年以上反応が持続した者もいた。研究に参加した英ロンドン大学がん研究所のKevin Harrington氏によると、T-VECのようなウイルス療法は腫瘍に対して二面攻撃を仕掛けることができ、副作用も少ないことから期待が高まっているという。

T-VECに対する反応は、比較的進行度の低い患者や、それまで治療を受けたことのない患者で特に強かった。同氏らは、この治療法が手術不能の進行メラノーマ患者の第一選択治療として有望だと述べている。

ステージ3およびステージ4初期の患者では、平均生存期間はT-VEC群で約41カ月、対照群で約22カ月だった。さらに悪性度の高いがんや、進行したがんにおいてT-VECが第一選択治療となりうるかを評価する研究も進行中だという。

米国の専門家らも遺伝子改変ウイルスを用いた免疫療法の有望性を認め、従来の皮膚がん治療に革命をもたらすものだと述べている。最も致死率の高い皮膚がんであるメラノーマの発症率は、米国でこの30年増加し続けており、米国がん協会(ACS)の推定によれば、今年約1万人がメラノーマで死亡するとされている。


The American Cancer Society has more about melanoma.

SOURCES: Philip Friedlander, M.D., Ph.D, assistant professor of medicine, dermatology, hematology and medical oncology, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York City; Michele Green, M.D., dermatologist, Lenox Hill Hospital, New York City; Institute of Cancer Research, news release, May 26, 2015