2015年7月 4日 19:47
 

トランス脂肪酸は、コレステロール値だけでなく記憶力にも悪影響を及ぼす可能性があることが新たな研究で示唆され、「PLoS One」に6月17日掲載された。ただし、今回の研究では因果関係は明らかにされていない。

研究の筆頭著者である米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)教授Beatrice Golomb氏によると、トランス脂肪酸には炎症を悪化させ、ホルモン産生を妨害する作用があり、それにより記憶力低下との関連を説明できる可能性があるという。「食物は身体が適切に機能するために必要な栄養素を得るためのものだが、トランス脂肪酸は逆に細胞や臓器の機能を破壊するものだ」と同氏は述べている。

今回の研究では、45歳以下の健康な男性645人を対象に、完全な食事調査と記憶検査を実施した。検査では、単語の書かれた104枚のカードを用い、初めて見る単語か、先に一度見せた単語かを答えてもらった。

正解数は平均86語だったが、1日あたりのトランス脂肪酸の摂取量が1g増えるごとに、成績が0.76語ずつ低下することが判明した。1日約16gのトランス脂肪酸を摂取していた群では、正しく覚えている単語数が平均より12語少なく、28g摂取していた群では21語少なかった。

トランス脂肪酸は炎症をもたらすだけでなく、脳機能に重要な役割を担うオメガ3脂肪酸の産生を阻害するとも考えられている。また、米国栄養・食事療法学会(AND)のJim White氏によると、トランス脂肪酸は気分、食欲、睡眠を制御するホルモンであるセロトニンの値に影響を及ぼす可能性もあるという。これまでの研究では、トランス脂肪酸の摂取量の多い人にうつ病が多いことが示されていると同氏は指摘する。

この知見が発表される前日には、米国食品医薬品局(FDA)が、トランス脂肪酸の主な摂取源である部分水素添加油(PHO)の食品への使用を3年以内に廃止することを求めると発表したばかり。米国の食品メーカーは2003年以降にトランス脂肪酸を86%削減しているが、それでも依然として、平均的な米国人は1日当たり5~6gのトランス脂肪酸を摂取しているという。「通常は食事から何かを完全に排除することは勧められないが、トランス脂肪酸が含まれるものは一切摂取すべきではない。害以外の何物でもない」とWhite氏は話している。

今回の研究では、分析対象となる女性の数が足りなかったため男性についてのみ検討しているが、女性にも同様の影響があると考えるのが妥当だとGolomb氏は述べている。

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For more on trans fats, visit the U.S. Food and Drug Administration.

SOURCES: Beatrice Golomb, M.D., Ph.D., professor of family and preventive medicine, University of California, San Diego School of Medicine; Marc Gordon, M.D., chief of neurology, Zucker Hillside Hospital, Glen Oaks, N.Y.; Jim White, R.D., nutrition expert, Virginia Beach, Va., and spokesman, Academy of Nutrition and Dietetics; June 17, 2015, PLOS One, online