2015年8月19日 15:16

 頭頚部がん患者の血液・唾液中に含まれる腫瘍由来のDNAが発見されたと、米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究グループが報告した。研究を率いた耳鼻咽喉・頭頚部外科准教授のNishant Agrawal氏は、「腫瘍DNAはスクリーニング、早期発見、治療時のモニタリングおよび治療後の経過観察に利用できる可能性がある」と述べ、近い将来には非侵襲的ながん検査が実現するとの見通しを示している。

Agrawal氏によると、今回の研究は100人未満の患者を対象とした予備的なものであり、検査の性能を向上させて的確な適応症を定めるには、さらに大規模な研究を実施する必要があるという。目標は、頭頚部がんの残留や再発の監視のほか、一般集団またはハイリスク集団の頭頚部がんスクリーニングにもこの検査を利用できるようにすることだと、同氏は付け加えている。この報告は「Science Translational Medicine」に6月24日掲載された。

頭頚部がんの主な危険因子はアルコール、タバコ(噛みタバコを含む)、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染であり、がんは口唇、前舌部、頬および歯肉を含めた口腔、喉の後壁および喉頭に発生する。

今回の研究では、頭頚部がんと新たに診断されたか、再発した患者93人の唾液を採取し、47人からは血液も採取した。71人(76%)の唾液検体および41人(87%)の血液検体に腫瘍DNAが見つかった。血液と唾液の両方を採取した47人のうち45人で、少なくともいずれかの体液中に腫瘍DNAを特定できた。

具体的には、頭頚部がんの増加の原因となっているHPVの痕跡を調べたほか、HPVに無関係のがんについては、特定のがん関連遺伝子の変異を調べた。結果を分析すると、唾液検査は口腔がん、血液検査は喉のがんの発見に優れていた。2つを併用すれば、がんがどこにあっても発見することができるとAgrawal氏は述べている。この検査の費用は数百ドルになると予想されるが、同氏は50ドル未満が理想だとしている。

米国がん協会(ACS)のLeonard Lichtenfeld氏は、このような検査が成功すれば、がんの早期発見・治療に大きく貢献するはずだと述べている。他のがんについても、特異的なDNA変異が発見されれば、それを検出する血液検査が可能になると同氏は述べ、「今回の研究は初期段階のものだが、その実現が可能であることを示す一歩だ」と付け加えている。


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For more on head and neck cancer, visit the U.S. National Cancer Institute.

SOURCES: Nishant Agrawal, M.D., associate professor, otolaryngology head and neck surgery, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore; Leonard Lichtenfeld, M.D., deputy chief medical officer, American Cancer Society; June 24, 2015, Science Translational Medicine