2015年8月19日 15:28
  

慢性腰痛の患者にうつ病や不安症がある場合、麻薬性鎮痛薬の効果が十分に得られない可能性があることが、新たな研究で明らかにされた。研究を率いた米ピッツバーグ大学教授のAjay Wasan氏は、痛みがうつ病や不安症を悪化させることもあれば、その逆もあり、両者には相互的関係があると説明する。

しかし、うつ病や不安症のある人は、麻薬性鎮痛薬による効果が大幅に低下するほか、薬剤乱用の確率が高いという。例えば薬剤の過剰摂取や、複数の医師から同じ薬剤の処方を受けるドクターショッピング、麻薬性鎮痛薬とマリファナやコカインの併用などがみられる。

医師は麻薬性鎮痛薬を処方する前にうつ病や不安症の評価と治療を行い、非麻薬性鎮痛薬や理学療法などの代替治療も検討する必要があると、Wasan氏は指摘している。

「Anesthesiology」に7月9日掲載された今回の研究では、軽度から重度のうつ病または不安症のある慢性腰痛患者55人を対象に、モルヒネ、オキシコドン、プラセボのいずれかを6カ月間投与する群に無作為に割り付けた。患者は疼痛レベルと毎日の薬剤量を研究グループに報告した。

その結果、うつ病および不安症が軽症の群では39%の疼痛改善が認められたのに対し、重症群は約21%であった。さらに重症群では、軽症群に比較して鎮痛薬の乱用が大幅に増加し(39%対8%)、副作用も多くみられた。米国家庭医学会(AAFP)によると、この薬剤クラスによくみられる副作用には便秘、倦怠感、混乱などがあるという。

米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク)のAllyson Shrikhande氏は、うつ病や不安症の既往のある患者では麻薬性鎮痛薬による効果を得られにくく、薬剤乱用のリスクが高い理由として、神経ホルモンバランスに対する麻薬の影響を挙げている。腰痛治療を行う医師は、事前に精神疾患の既往歴をたずねることが重要であり、精神科医や心理学者との連携も不可欠だとShrikhande氏は述べている。

米ズッカー・ヒルサイド病院(ニューヨーク州グレンオークス)のScott Krakower氏は、「この研究は併存疾患のスクリーニングと治療の重要性を再確認させるもの。不安症や気分症状が軽減すれば、長い目で見て痛みを緩和できるチャンスが十分にある」と述べている。