2015年8月19日 15:33
   

米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)が2013年に発行した新たなガイドラインにより、スタチン系薬剤を使用すべき患者をこれまでよりも正確かつ効率的に特定できることが報告された。これにより、救われる命がさらに増える可能性があると研究グループは述べている。

この研究を率いた米マサチューセッツ総合病院(ボストン)のUdo Hoffman氏は、「われわれの研究結果から、新ガイドラインでスタチンに新たに適格となる約1,000万人の米国成人について推定すると、10年間で4万1,000~6万3,000件の心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡)を予防できると考えられる」と述べている。この知見は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に7月15日掲載された。

新ガイドラインはスタチンの使用に特に焦点を当てており、この薬剤はLDL(いわゆる「悪玉」)コレステロール値を下げることにより心疾患を予防する。

今回の研究では、2004年発行の旧ガイドラインと2013年発行の新ガイドラインにより、35歳以上の男性および40歳以上の女性の心イベントリスクがどのように予測されるかを分析し、比較した。対象者は2002~2005年の時点で心疾患の既往はなく、2013年まで健康状態を追跡した。全員にCTを繰り返し実施し、心疾患の徴候である動脈内のカルシウム沈着増大を調べた。

「このデータから、スタチンによる予防的治療を開始するのに非侵襲的評価が有用であることが示唆された」と、この問題に精通している米マウント・サイナイ医科大学アイカーン医学部(ニューヨーク市)のRobert Rosenson氏はコメントしている。

Hoffman氏らは、新ガイドラインによりスタチンに適格とされる患者が約1,300万人増加すると予想している。必要のない患者にまでスタチンが処方される可能性も懸念されるが、新ガイドラインは服薬の必要のない低リスク患者の特定にも優れていると考えている。

研究共著者の1人である米国立心肺血液研究所(NHLBI)のChristopher O'Donnell 氏は、「このガイドラインにより、適切な患者に適切な治療を届けるという医学の目標を達成する能力が向上した」と述べている。米ノースショア-LIJフランクリン病院(ニューヨーク州)のDavid Friedman氏は、健康的な食事、定期的な運動、禁煙および体重管理が心臓の保護に有効だと述べるとともに、今回の研究は「予防的スタチンの早期使用」にも同じ効果があるとの考えを裏付けるものだと指摘している。