2015年10月20日 17:39
  

睡眠不足で体力が低下しているときは実際に風邪を引きやすいことが、新たな研究で判明した。「免疫系に対する睡眠の役割は十分に立証されているが、完全には解明されていない」と、研究の筆頭著者で米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)助教授のAric Prather氏は述べている。

今回の研究は、睡眠不足が風邪の原因になると裏付けるものではないが、免疫系の働きや慢性疾患の発症リスクと睡眠の関連を示した既存研究の結果に通じるものだという。Prather氏によると、動物やヒトの研究において、「健康な人が(一時的に)一晩全く眠らないと、血液中の免疫細胞の種類や、免疫系の伝達を補助する細胞から放出される化学伝達物質の種類に、きわめて明確な変化がみられる」ことが示されている。

米国疾病管理予防センター(CDC)も睡眠不足の「蔓延」に懸念を示している。また、米国立睡眠財団(NSF)の最近の調査では、米国人の20%は1日の平均睡眠時間が6時間未満であることが示されていると、著者らは指摘している。

今回の研究では、2007~2011年に2カ月間の健康診断を受診したピッツバーグ在住の健康な被験者164人(18~55歳)を対象とした。風邪ウイルスに曝露する前の1週間にわたり被験者の普段の睡眠パターンを監視し、その後、全被験者を5日間ホテルに隔離して風邪ウイルスの含まれる点鼻液を投与した。

その結果、1日の睡眠時間が7時間以上であった群に比べ、6時間未満の群は風邪リスクが4.2倍、5時間未満の群は4.5倍であった。

研究の実施時期、体重、所得、学歴、ストレスレベル、喫煙、運動、飲酒などの因子を考慮しても結果は変わらなかったという。また、今回の研究では人工的に睡眠時間を減らすのではなく、従来の睡眠パターンを追跡していることから、強い科学的根拠があると研究グループは付け加えている。この知見は「Sleep」9月号に掲載された。

米ブラウン大学アルパート医学部(ロードアイランド州)教授のMary Carskadon氏は、今回の知見はこれまでの研究が示してきた方向を裏付けるものだと述べる一方、その背景にある機序は明らかにされていないと指摘する。「長時間の睡眠が健康を保護するのか、あるいは睡眠不足により脆弱性が生じるのかという、“鶏と卵”の問題には未だ答えが見つかっていない」と同氏は付け加えている。


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There's more on good sleep at the U.S. National Heart, Lung, and Blood Institute.

SOURCES: Aric A. Prather, Ph.D., assistant professor, department of psychiatry, and associate director, Center for Health and Community, University of California, San Francisco; Mary A. Carskadon, Ph.D., professor, psychiatry and human behavior, Alpert Medical School of Brown University, and director, Bradley Hospital Sleep and Chronobiology Research Laboratory, E.P. Bradley Hospital, East Providence, R.I.; September 2015, Sleep