2015年10月20日 15:20
   

慢性リンパ球性白血病(CLL)に対する実験的治療法の有望性が認められたという。CTL019と呼ばれるこの治療では、まず患者自身のT細胞を採取し、がん細胞を見つけて死滅させるように再プログラムして、化学療法後に患者に注入する。研究を率いたペンシルバニア大学病院(フィラデルフィア)のDavid Porter氏は、「これは極めて個別化された、新規の精密ながん治療法だ」と述べている。

CLLは成人の白血病としては最も多く、生存期間は2~20年以上とさまざまである。幹細胞移植で治癒することもあるが、適格でない患者もいるという。

今回の研究では、従来治療の後に再発または増悪がみられ、2010年にCTL019治療を実施した患者14人を追跡した。

その結果、8人に奏効性が認められた。4人が完全寛解に至り、うち1人は皮膚がん除去後の感染症により21カ月後に死亡したが、他の3人は解析時点(28、52、53カ月)で白血病の徴候もなく生存していた。4人に部分寛解がみられ、平均7カ月持続した。うち2人は追跡期間中に疾患の進行により死亡し(治療後10、27カ月時点)、1人は6カ月後に血栓で死亡。1人は13カ月後に増悪がみられたが、36カ月後の時点で生存していた。

一方、6例には治療反応が認められず、1~9カ月以内に増悪した。副作用としては血液中への蛋白放出によるインフルエンザ様症状がみられ、患者によっては薬剤治療を必要とした。また一部の患者には抗体価の低下が生じ、抗体を補充することにより治療した。

研究で認められた寛解が持続すれば、さらに早期の段階で患者を治療できる可能性があるとPorter氏は話す。1回の治療で済むため、長期にわたり治療を繰り返す必要もない。また、細胞が患者の体内に何年も留まり機能し続けることが示されたことから、再発を予防できる可能性も高いと、同氏は期待を示している。この報告は「Science Translational Medicine」に9月2日掲載された。

米国がん協会(ACS)のSusanna Greer氏はこの治療法の有望性を認め、他のがんの治療にも利用できる可能性があると指摘する。Porter氏によると、すでに非ホジキンリンパ腫でも高い寛解率が示されており、膵がん、卵巣がん、一部の肺がんおよび脳がんに対しても類似する治療法の臨床試験が進められているという。米ノースショア-LIJがん研究所のJacqueline Barrientos氏は、「今回の画期的な試験成績は、免疫療法が将来的にCLL患者の新しい治療法となるとの考えを裏づけるものだ」と述べている。


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For more on chronic lymphocytic leukemia, visit the American Cancer Society.

SOURCES: David Porter, M.D., director, blood and marrow transplantation, Hospital of the University of Pennsylvania, Philadelphia; Jacqueline Barrientos, M.D., medical oncologist, CLL research and treatment specialist, North Shore-LIJ Cancer Institute, Lake Success, N.Y.; Susanna Greer, Ph.D. director, clinical research and immunology, American Cancer Society; Sept. 2, 2015, Science Translational Medicine

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