2015年11月18日 16:14
  

普通の石けんと「抗菌」石けんでは、手の細菌を除去する効果に差がないことが、韓国の新たな研究で明らかにされた。抗菌成分のトリクロサンは、細菌を数時間曝露させた場合は普通の石けんよりも強い殺菌作用が認められたが、実際に手を洗う試験では普通の石けんを超える清浄効果は認められなかった。

韓国、高麗大学校(ソウル)の Min Suk Rhee 氏は、「トリクロサンの殺菌効果は曝露する濃度と時間によって決まる」と説明する。しかし、抗菌石けんで手を洗う人の多くは、トリクロサン0.3%(法律で認められた最大濃度)未満の石けんを用い、30秒未満しか手を洗わないため、十分な効果が得られない。この知見は「Journal of Antimicrobial Chemotherapy」9月16日号に掲載された。

米国食品医薬品局(FDA)によると、抗菌成分として液状石けんにはトリクロサン、固形石けんにはトリクロカルバンが用いられるが、その効果や安全性については疑問の声もあるという。トリクロサンの危険性を示す根拠はないが、動物の研究では正常なホルモン調節を妨げたり、抗生物質耐性に寄与したりする可能性が示されている。FDAは、(2016年より)トリクロサンに関連する表示の裏付けとなる確かな研究結果の提出をメーカーに求める新たな規則を提案している。

今回の研究では、20種類の細菌株を試験管に入れ、普通石けんと0.3%トリクロサン含有石けんに手洗い時の一般的な温度で曝露させた。9時間以上継続して曝露した場合、トリクロサンには「有意に」強い抗菌性が認められたが、10、20、30秒の曝露では、普通石けんを上回る効果はないことがわかった。追加試験では成人16人が実際に手を洗ったが、いずれの石けんも細菌除去に概ね有効であり、両者の間に有意差はみられなかった。

Rhee氏は、今回の結果は抗菌石けん製品に関する最終的な結論を示すものではないと強調している。また、業界団体の広報担当であるBrian Sansoni氏は、抗菌石けんの安全性と有効性には長年のデータと研究に裏付けられた実績があるとの見解を示している。

米ニューヨーク大学ランゴン医療センター准教授のLeonardo Trasande氏は、「今回の結果は、普通の石けんでも十分であることを明確に裏付けるものだ」と述べている。


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There's more on the antiseptic triclosan at the U.S. Food and Drug Administration.

SOURCES: Min Suk Rhee, Ph.D., professor, department of biotechnology, and department of food bioscience and technology, College of Life Sciences and Biotechnology, Korea University, Seoul, South Korea; Leonardo Trasande, M.D., associate professor, departments of pediatrics, population health and environmental medicine, NYU Langone Medical Center, New York City; Brian Sansoni, spokesman, and vice president, Sustainability Initiatives, and of Communication and Membership, American Cleaning Institute, Washington, D.C.; Sept. 16, 2015, Journal of Antimicrobial Chemotherapy

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