2015年11月18日 16:27
  

前立腺がん患者において、男性向けサプリメントの有用性は認められないことが新たな研究で示された。放射線治療の副作用のリスク、限局がんの拡散リスク、がんによる死亡リスクのいずれも、サプリメントで低減しなかった。研究の筆頭著者で米フォックスチェイスがんセンター(フィラデルフィア)の研修医であるNicholas Zaorsky氏によると、新たにがんと診断された患者の2人に1人は何らかのサプリメントを試しているという。

今回の研究で着目したのは、「男性向け」「前立腺の健康によい」と謳われる製品で、その多くはボトルに「臨床的に立証済み」「泌尿器科医が推薦」などと表示されているが、実際に臨床試験は実施されていない。2001~2012年に放射線療法を受けた36歳以上の患者2,200人以上を対象に調査した結果、約10%が治療中またはその後の4年間に約50種類の男性向けサプリメントのうち1種類以上を使用していた。

90%以上のサプリメントは前立腺肥大に有効とされるノコギリヤシ抽出物を含有しており、一部には成分が明らかにされていないものもあった(「その他」「企業秘密の酵素」などと表示)。サプリメントによる有害な副作用はみられなかったが、運動や食事などの生活習慣の因子を考慮すると、サプリメント使用者に全生存率の向上は認められず、前立腺がんの転帰に対する便益はないと、研究チームは結論づけた。

サプリメント業界の事業者団体、有用栄養物審査会(CRN)のDuffy MacKay氏は、この報告に対し、男性用サプリメントの主要成分については臨床試験で有意な健康への効果が示されていると反論。さらに、「今回の研究の主張は結論ありきでデータを探して得られたものであり、科学的根拠が示されていない」と述べ、「いずれの製品も疾患を治療できるとは謳っていない」と同氏は付け加えている。

1994年に制定された米国の栄養補助食品健康教育法では、サプリメントの安全性に関する責任は製造者が単独で負うものとしている。販売には米国食品医薬品局(FDA)への登録が必要だが、表示内容は製造者と販売者の自主管理に委ねられている。

この知見は、10月18~21日に米サンアントニオで開催された第57回米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次集会で発表された。なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなす必要がある。


More information

There's more on dietary supplement regulations at the U.S. Food and Drug Administration.

SOURCES: Nicholas G. Zaorsky, M.D., resident physician, radiation oncology, Fox Chase Cancer Center, Philadelphia, Pa.; Stephen Freedland, M.D., professor, surgery (urology), and director, Center for Integrated Research in Cancer and Lifestyle, Cedars-Sinai Medical Center, Los Angeles, Calif.; Duffy MacKay, N.D., senior vice president, scientific and regulatory affairs, Council for Responsible Nutrition, Washington, D.C.; presentation, American Society for Radiation Oncology annual meeting, San Antonio, Texas, Oct. 18, 2015

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