2016年2月18日 03:11

ビタミンである葉酸は、妊娠中に摂ると出生異常を防ぐことは昔から知られており、ほとんどどんな用量でも、何のリスクももたらしません。ただ、大量に摂ると、ビタミンB12が欠乏した状態であってもそれが隠れてしまうおそれがあります(こうした欠乏症を引き起こすのではありません)。

そのため、葉酸の高用量摂取をする場合には、血清ビタミンB12値が十分であることを確認することが重要です。最も一般的な用量(1日当たり1,000 μg未満)であれば、ビタミンB12の欠乏が隠れることはありません。

葉酸にはこの他にも、循環器疾患と脳卒中に対する効果があることが、新しい研究で示されています。

中国で行われたその研究は、高血圧症の成人20,702人を含めたもので、この被験者は、試験開始の時点で、脳卒中と心臓発作の病歴はありませんでした。この試験は、「中国脳卒中一次予防試験(CSPPT)」と呼ばれる無作為化二重盲検臨床試験であり、その被験者全員に、高血圧治療のためのACE阻害薬であるエナラプリル(商号:バソテック)が与えられました。これに加え、被験者の半数に毎日800 μgの葉酸、残りの半数にプラセボが与えられました。そして、平均4.5年にわたり被験者の追跡を行いました。

試験の終了時に、研究グループは、この期間中に脳卒中(虚血性脳卒中と出血性脳卒中を含む)を初めて生じた被験者の数を調べました。また、心臓発作の件数、心血管系死亡の件数、総死亡率にも注目しました。(Huo Y, et al., Efficacy of folic acid therapy in primary prevention of stroke among adults with hypertension in China: the CSPPT randomized clinical trial. JAMA. 2015 Apr 7;313(13):1325-35.)

エナラプリルのみを与えたグループと比較して、プラセボではなく葉酸をエナラプリルと併せて摂っていたグループでは、初回脳卒中を生じるリスクが21%低く、初回虚血性脳卒中を生じるリスクは24%低くなっていました。

また、心血管系死亡、心筋梗塞、脳卒中から成る心血管系複合事象のリスクが20%低くなっていました。出血性脳卒中のリスクと総死亡率についても減少傾向は見られたものの、その減少率は統計的に有意な域には達していませんでした。また、この組合せで摂っていたグループでは、エナラプリル+プラセボのグループと比較して、副作用の増加は見られませんでした。

実践的ガイドライン

葉酸は、その名が示すとおり、茎葉、つまり葉物野菜に含まれています。一般的にマルチビタミン剤で400 μgの量を摂ることができますが、800 μgの葉酸を含んでいるマルチビタミン剤もあります。葉酸は、細胞の複製と増殖、ならびにDNAとRNAの生成に不可欠です。

また、循環器疾患との関連が見られている代謝物であるホモシステインの低減に役立ちます。処方箋がなくても5,000 μgもの高用量の葉酸を入手することができ、そうした高用量摂取は、それ以下の場合より、ホモシステインを低下させる効果が高くなります。

実際にそうした高用量摂取をする場合は、ビタミンB12値を調べてもらうのが良策です。その他の点では、葉酸の高用量摂取によるリスクはありません。