【Ⅰ-3-1(医療機能の分化・強化/地域包括ケアシステムの推進)-⑤】
かかりつけ薬剤師・薬局の評価
骨子【Ⅰ-3-1(4)】
第1 基本的な考え方
患者本位の医薬分業の実現に向けて、患者の服薬状況を一元的・継続 的に把握して業務を実施するかかりつけ薬剤師・薬局を以下のように評 価する。
1.患者が選択した「かかりつけ薬剤師」が、処方医と連携して患者の服 薬状況を一元的・継続的に把握した上で患者に対して服薬指導等を行う 業務を薬学管理料として評価する。
2.1. の評価に加え、地域包括診療料、地域包括診療加算等が算定され る患者に対してかかりつけ薬剤師が業務を行う場合は、調剤料、薬学管 理料等に係る業務を包括的な点数で評価することも可能とする。
3.かかりつけ薬剤師が役割を発揮できる薬局の体制及び機能を評価する ため、基準調剤加算を統合し、「患者のための薬局ビジョン」を踏まえ、 在宅訪問の実施、開局時間、相談時のプライバシーへの配慮等の要件を 見直す。
4.患者が薬局における業務内容及びその費用を理解できるよう、かかり つけ薬剤師を持つことの意義、利点等を含め、患者に対する丁寧な情報 提供を推進する。
第2 具体的な内容
1.患者が選択したかかりつけ薬剤師が、患者に対して服薬指導等の業務 を行った場合の評価を新設する。
(新) かかりつけ薬剤師指導料 ○点
[算定要件]
(1) 患者の同意の上、かかりつけ薬剤師として服薬指導等の業務を実施した 場合に算定する。
(2) 患者の同意については、患者が選択した保険薬剤師をかかりつけ薬剤師 とすることの同意を得ることとし、当該患者の署名付きの同意書を作成し た上で保管し、当該患者の薬剤服用歴にその旨を記載する。なお、患者の 服用薬について、一元的・継続的な管理を推進する観点から患者1人に対 して、1 人の保険薬剤師のみがかかりつけ薬剤師として算定できる。
(3) 当該指導料は、患者の同意を得た後の次の来局時以降に算定可能とする。
(4) 当該指導料を算定する保険薬剤師は、以下の要件を満たしている旨を地 方厚生局長等に届け出ていること。
① 薬剤師として◯年以上の薬局勤務経験があり、同一の保険薬局に週◯ 時間以上勤務しているとともに、当該保険薬局に◯年以上在籍している こと。
② 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を 取得していること。
③ 医療に係る地域活動の取組に参画していること。(地域の行政機関や関 係団体等が主催する講演会、研修会等への参加、講演等の実績)
(5) 他の保険薬局及び保険医療機関においても、患者が選択したかかりつけ 薬剤師の情報を確認できるよう、手帳等にかかりつけ薬剤師の氏名、勤務 先の保険薬局の名称を記載すること。
(6) 患者に対する服薬指導等の業務はかかりつけ薬剤師が行うことを原則と する。かかりつけ薬剤師以外の保険薬剤師が服薬指導等を行った場合は当 該指導料を算定できない。
(7) かかりつけ薬剤師は、担当患者に対して、以下の業務を行っていること。
① 薬剤服用歴管理指導料に係る業務を実施した上で患者の理解に応じた 適切な服薬指導等を行うこと。
② 患者が服用中の薬剤等について、患者を含めた関係者が一元的、継続 的に確認できるよう、患者の意向を確認した上で手帳を用いて当該指導 等の内容を記載すること。
③ 患者が受診している全ての保険医療機関の情報を把握し、服用してい る処方薬をはじめ、要指導医薬品及び一般用医薬品(以下「要指導医薬 品等」という。)並びに健康食品等について全て把握するとともに、その 内容を薬剤服用歴に記載すること。また、当該患者に対して、保険医療 機関を受診する場合や他の保険薬局で調剤を受ける場合には、かかりつ け薬剤師を有している旨を明示するよう説明すること。
④ 患者から 24 時間相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝え るとともに、勤務表を作成して患者に渡すこと。ただし、やむを得ない 事由により、かかりつけ薬剤師が開局時間外の問い合わせに応じること ができない場合には、あらかじめ患者に対して当該薬局の別の薬剤師が 開局時間外の相談等に対応する場合があることを説明するとともに、当 該薬剤師の連絡先を患者に伝えることにより、別の薬剤師が対応しても 差し支えない。
⑤ 患者が他の薬局で調剤を受けた場合は、その服用薬等の情報を入手し、 薬剤服用歴の記録に記載すること。
⑥ 調剤後も患者の服薬状況の把握、指導等を行い、その内容を薬剤を処 方した保険医にその内容を情報提供し、必要に応じて処方提案すること。 服薬状況の把握の方法は、患者の容態や希望に応じて、定期的に連絡で きるようにすること(電話による連絡、患家への訪問、患者の来局時な ど)。また、服薬期間中に服用中の薬剤に係る重要な情報を知ったときは、 患者又はその家族等に対し当該情報を提供し、患者への指導等の内容及 び情報提供した内容については薬剤服用歴の記録に記載すること。
⑦ 継続的な薬学的管理のため、患者に対して、服用中の薬剤等を保険薬 局に持参する動機付けのために薬剤等を入れる袋(いわゆるブラウンバ ッグ)を必要に応じて配布し、その取組の意義等を説明すること。また、 患者が薬剤等を持参した場合は服用薬の整理等の薬学的管理を行うこと とするが、必要に応じて患家を訪問して服用薬の整理等を行うこと。
(8) 薬剤服用歴管理指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料又は在宅患者訪問 薬剤管理指導料(当該患者の薬学的管理指導計画に係る疾病と別の疾病又 は負傷に係る臨時の投薬が行われた場合を除く。)と同時に算定できないこ と。
2.かかりつけ薬剤師の業務について、出来高による1.の評価に加えて、 包括的な評価も新設する。
(新) かかりつけ薬剤師包括管理料 ○点
[包括範囲]
下記以外は包括とする。
(1) 時間外等加算、夜間・休日等加算
(2) 在宅医療に係る点数
(3) 薬剤料
(4) 特定保険医療材料料
[算定要件]
(1) 対象患者は地域包括診療料、地域包括診療加算等の算定対象患者とする。
(2) 患者の服薬状況等については、薬学的知見に基づき随時把握して、保険 医に対して、その都度情報提供するとともに、必要に応じて減薬等の処方 提案を実施すること。
なお、情報提供の要否、方法、頻度等については、あらかじめ保険医と相 談して合意が得られている場合は、当該合意に基づいた方法等によることで 差し支えないこと。
(3) 「かかりつけ薬剤師指導料」の算定要件の(1)~(7)を満たしていること。
(4) 薬剤服用歴管理指導料、かかりつけ薬剤師指導料又は在宅患者訪問薬剤管 理指導料(臨時の投薬が行われた場合を除く。)と同時に算定できないこと。
3.基準調剤加算を統合し、施設基準の要件を以下のとおりとする。 また、後発医薬品の調剤割合が低い保険薬局に対する評価の適正化の
観点から、特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が○% を超える場合であって、後発医薬品の調剤割合が○%未満の保険薬局に ついては、基準調剤加算を算定できないこととする。
現 行 |
改定案 |
【基準調剤加算】 |
【基準調剤加算】 |
別に厚生労働大臣が定める施設 基準に適合しているものとして地 方厚生局長等に届け出た保険薬局 において調剤した場合には、当該基 準に係る区分に従い、次に掲げる点 数を所定点数(注1に該当する場合 には注1に掲げる点数)に加算す る。なお、注1のロに該当する場合 にあっては、注1に規定する別に厚 生労働大臣が定める施設基準に適 合しているものとして地方厚生局 長等に届け出た保険薬局において のみ加算できる。 イ 基準調剤加算1 12 点 ロ 基準調剤加算2 36 点
[施設基準] 通則 イ~ロ 略 ハ 地域の保険医療機関の通常の診 療時間に応じた開局時間となって いること。 (新設)
ニ 適切な薬学的管理及び服薬指導 を行うにつき必要な体制及び機能 が整備されており、患者に対し在宅 に係る当該薬局の体制の情報を提 供していること。 ホ 略 (新設) |
別に厚生労働大臣が定める施設 基準に適合しているものとして地 方厚生局長等に届け出た保険薬局 において調剤した場合には、基準調 剤加算として所定点数に○点を加 算する。なお、区分番号00に掲げる 調剤基本料1を算定している保険 薬局のみ加算できる。
(削除) (削除)
[施設基準] (削除) イ~ロ 略 ハ 一定時間以上開局していること。
ニ 十分な数の医薬品を備蓄してい ること。 ホ 適切な薬学的管理及び服薬指導 を行うにつき必要な体制及び機能 が整備されており、患者に対し在宅 に係る当該薬局の体制の情報を提 供していること。 へ 略 ト 当該保険薬局のみ又は当該保険 薬局を含んだ連携する近隣の保険 |
(新設)
(新設)
(新設)
(新設)
(新設)
基準調剤加算1 イ~ハ 略 |
薬局において、二十四時間調剤並び に在宅患者に対する薬学的管理及 び服薬指導を行うにつき必要な体 制が整備されていること。 チ 在宅患者に対する薬学的管理及 び指導について、実績を有している こと。 リ 当該地域において、在宅療養の支 援に係る診療所又は病院及び訪問 看護ステーションとの連携体制が 整備されていること。 ヌ 当該地域において、他の保健医療 サービス及び福祉サービスとの連 携調整を担当する者との連携体制 が整備されていること。 ル かかりつけ薬剤師指導料又はか かりつけ薬剤師包括管理料の施設 基準の届出を行っていること。 ヲ 特定の保険医療機関に係る処方 せんによる調剤の割合が○割を超 える場合であって、当該保険薬局に おいて調剤した後発医薬品のある 先発医薬品及び後発医薬品を合算 した薬剤の使用薬剤の薬価(薬価基 準)別表に規定する規格単位ごとに 数えた数量(以下「規格単位数量」 という。)に占める後発医薬品の規 格単位数量の割合が○割以上であ ること。 (削除) |
基準調剤加算2 イ~へ 略 |
(削除) |
※ 「一定時間以上開局している」基準として、通知において、「平日は1日
◯時間以上、土曜日又は日曜日のいずれかの曜日には一定時間以上開局し、 かつ、週◯時間以上開局していること」を規定する。
※ 「十分な医薬品を備蓄している」基準として、通知において、「◯品目以 上」を規定する。
※ 「体制及び機能の整備」として、通知において、現行で例示や努力規定と されていた「医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)の登 録」、「患者のプライバシーに配慮した構造」を要件とし、「管理薬剤師は◯ 年以上の薬局勤務経験があり、同一の保険薬局に週◯時間以上勤務している とともに、当該保険薬局に◯年以上在籍していること」、「健康相談又は健康 教室を行っている旨の薬局内掲示」、「敷地内は禁煙であること」、「同一施設 内での酒類、たばこの販売禁止」を新たに要件として義務付ける。
4.調剤報酬点数表の一覧等については、現在、薬局内の見やすい場所に 掲示することとされているが、薬剤交付窓口等、指導等の際に患者にわ かりやすい場所に掲示することを通知において規定する。
要約すると
●かかりつけ薬剤師・薬局の基本的機能
【1】服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導
電子版お薬手帳の活用
電子手帳は、「携帯性が高く受診時に忘れにくい」、「保存容量が大きく、長期にわたる服用歴の管理が可能となる」等のメリットがある。一方では、「異なるシステムでも医療関係者で情報が共有化できるようにする」、「医療情報ネットワークの普及を見据えてフォーマットの統一などが行われる必要がある」等の課題もある。
【2】24時間対応、在宅対応
【3】かかりつけ医を始めとした医療機関等との連携強化
●健康サポート薬局の機能
①医薬品等の安全かつ適正な使用に関する助言を行う
②健康づくりに関する相談を幅広く受け付け、必要に応じ、かかりつけ医を始め適切な専門職種や関係機関に紹介する
③地域の薬局の中で率先して地域住民の健康づくりを積極的かつ具体的に支援する
④地域の薬局への情報発信、取組み支援等を行う
【1】薬剤師の資質
一般用医薬品や健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言や、健康に関する相談、適切な専門職種や関係機関への紹介等に関する研修を修了した薬剤師が常駐していること。
【2】薬局における表示
「健康サポート薬局」であることや、一般用医薬品や健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言を、健康に関する相談を積極的に行っている旨を、薬局の外側の見えやすい場所に掲示すること。
【3】健康相談・健康づくり支援
一般用医薬品や健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言や、健康に関する相談を行い、利用者の状況や一般用医薬品、健康食品等の特性を十分に踏まえ、利用者自らが一般用医薬品、健康食品等を適切に選定し、かつ使用することができるよう、専門的知識に基づき説明するよう取り組むこと。販売内容や相談内容を記録し、一定期間保存していること。