2016.3.24 , EurekAlert より:
高脂肪食が幹細胞を増殖させるだけでなく非幹細胞に幹細胞のような性質をもたらすようだ、という米国マサチューセッツ工科大学からの研究報告。
過去数十年にわたって、多くの研究が肥満と高脂肪高カロリー食の摂取はさまざまな部位のがんの顕著なリスク因子であることを証明してきた。今回研究チームは高脂肪食が結腸の内皮細胞をがん化し易くするメカニズムを明らかにした。
このマウスを用いた実験は、高脂肪食が腸の幹細胞を増殖させ、幹細胞のようにふるまう一群の細胞を作り出した。それらは自身と同じものを再生産し他の種類の細胞に分化したという。これらの幹細胞と幹細胞様細胞が、腸の腫瘍を作り上げていくのである、とMITの助教授であるオマー・イルマズは述べている。
「高脂肪食は幹細胞の生物学的特性を変えるだけなく、非幹細胞の生物学も変化させ、それは間違いなく腫瘍の形成を高めることにつながる」とイルマズは述べている。
「高脂肪食下において、非幹細胞は幹細胞の特性を手に入れることで腫瘍源的な細胞に変化するのである」と共同研究者のデビッド・サバティーニ教授は述べている。
研究チームは、健康なマウスに9-12カ月間60%の脂肪食を与えた。これは極めて脂肪が多い食事で、米国人の食事は高脂肪食といわれてもせいぜい40%ていどである。
この間マウスは体重が通常食の対照群マウスに比べて30-50%多く増加した。そして大腸がんの発症も増加した。
これらのマウスではまた、腸の幹細胞も変化したことを研究チームは発見した。まず、高脂肪食を食べ続けたマウスはより多くの腸幹細胞をもっていた。これらの幹細胞はまた、隣接細胞からのインプットなしにオペレートすることができた。
通常の腸の幹細胞はサポート細胞によって取り巻かれている。それは幹細胞を制御し、いつ幹細胞が分化するかを幹細胞に語りかける存在である。けれども高脂肪症を食べ続けたマウスの幹細胞は自分自身でその機能を使うことができた。細胞を培養皿に持ってくると、正常な幹細胞をもってきた場合に比べて、より容易にそれ自身でミニ腸細胞を形成したという。
研究チームはまた、前駆細胞と呼ばれる別の細胞集団(幹細胞が分化した娘細胞)が幹細胞のようにふるまい始めることを発見した。それらがより長生きするようになり、体外でも成長してミニ腸を形成するまでになったのである。
「これは本当に重要だ。なぜなら幹細胞はしばしば突然変異を起こしてがん化することが知られているからだ」とイルマズは言う。「伝統的な幹細胞だけでなく、非幹細胞までが突然変異して腫瘍を形成し易くなったのだ。」
この背景には、PPAR-δと呼ばれる高脂肪に反応して細胞の代謝プロセスを変える脂肪センサーが働いているようだ。「実際、PPAR-δのアゴニストである小分子は高脂肪食の効果を模倣する」とサバティーニは述べている。
この代謝プログラム活性化に加えて、PPAR-δはまた幹細胞のアイデンティティに重要な一組の遺伝子を活性化するようだ。イルマズの研究室では新しい抗がん薬開発のための標的を明らかにしようとメカニズムの解明に取り組んでいるという。
出典は『ネイチャー』。 |