多価不飽和脂肪酸は、コーン油、大豆油、サフラワー油、キャノーラ油、ピーナッツ油などの植物油に見られ、こうした油には主にオメガ6脂肪酸が含まれています。これは冷蔵庫の中でも液体のままであり、(室温でも)固まる飽和脂肪のように凝固することはありません。
冷たい水の中で生きている魚は、柔軟性を保ったまま泳ぎ回ることができるよう、自己の組織内に他より多くの多価不飽和脂肪が必要なのです。人の健康に最も重要な多価不飽和脂肪はオメガ3の油であり、これは、抗炎症作用、血小板の粘性の抑制、循環器疾患のリスク低下、うっ血性心不全への効果、血圧とトリグリセリドの低下、喘息への効果など、数多くの生理学的効果をもたらします。
動脈壁は、内皮細胞、筋肉、エラスチンおよびコラーゲンで構成され、通常はとても柔軟ですが、加齢とともに硬くなりやすく、とくに、高血圧や炎症によるストレスを受けると硬くなりがちです。動脈壁の硬化は、循環器疾患リスクの指標となります。
動脈が硬くなると、心臓は血液を送り出すのにもっと働かなければなりません。硬化の指標として、脈波伝播速度、ならびに収縮期血圧と拡張期血圧との差が用いられます。脈波伝播速度が遅いほど、動脈が柔軟であるとみなされます。
ある新しい研究では、血清中のオメガ3系脂肪酸の値が高いほど脈波伝播速度が遅いという結果が示されています。この研究は、アイスランドの集団ベース研究におけるサブグループからデータを集めたもので、被験者は70~80歳の成人501人、そのうち46%が男性でした。
研究では、試験開始時点での血漿中の各脂肪酸値を調べ、また、魚油の摂取について、有効性が確認されている食品摂取頻度調査票を用いることにより、若年期(14~19歳)、中年期(40~50歳)、老年期(66~96歳)という3種類の時点での摂取量を推定しました。測定されたオメガ3系脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)であり、被験者の追跡期間は平均5.2年でした。
結果として、血漿中のオメガ3系脂肪酸の値が高いほど、脈波伝播速度が遅いという関連が見られ、2つのオメガ3系脂肪酸を合わせた場合やDHAのみの場合と比較して、EPAのほうがその関連性が強く見られました。一方、オメガ6系脂肪酸については(その多くは高度に加工された食品から摂取したもの)、血漿中の値が高いほど、動脈壁硬化のリスクが高くなっていました。
オメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸)は、魚の他に、亜麻の実、クルミ、大豆、チアシードにも含まれています。ただし、これらにはオメガ6系脂肪酸も含まれています。オメガ6は必須脂肪酸ですが、西洋式の食事の場合、工場で生産される食品に使われる高度に加工された油から過剰摂取されていることが多いのです。、α-リノレン酸は酵素によってEPAとDHAに変換されなければならないのですが、加齢や疾患によってこのプロセスが制限されることがあります。
調査票から推定した各世代区分(若年期・中年期・老年期)における魚油の摂取量に関しては、血漿値とは異なり、動脈壁硬化の測定値と何の関連も見られませんでした。これは、被験者が食事での摂取量を十分に思い出すことができなかったためかもしれません。
(Reinders
I, et al., Higher plasma phospholipid n-3 PUFAs, but lower n-6 PUFAs, Are
associated with lower pulse wave velocity among older adults. J Nutr. 2015
Oct;145(10):2317-24.)