2016年10月12日 18:57
16年版経済財政白書 高齢者特有消費に健康食品、市場規模7,390億円

先月2日にまとまった2016年度の経済財政報告(経済財政白書)で、高齢者世帯特有の消費として青汁やサプリなどの「健康保持用摂取品」があり、その消費額が7,390億円に上ることが明らかになった。家計調査等でも健食市場は高齢者層が支えていることが明白になっているが、超高齢社会に突入した日本での今後の展開を考える上で参考になりそうだ。

■消費を抑制している世帯は「39歳以下」「60代前半」

白書では、アベノミクスによって雇用・所得環境が改善、弱さは残るが緩やかな回復基調が続いていると指摘。一方で、イギリスの国民投票でのE U 離脱支持―― など、世界経済の先行き不透明感が「さらに高まっている」と警鐘を鳴らした。

また、個人消費は14年の消費増税で「力強さを欠いた状態にある」と分析。その層は、世帯主が39歳以下のサラリーマン世帯、60代前半無職世帯であるとした。

子育て期にある前者では、可処分所得が緩やかに増えているのに、消費支出はほとんど伸びておらず、「節約志向が強まっている」。後者は定年退職などに直面、15年半ば以降の株価変動で金融資産からの収入減少もあって「消費が抑制されていると推察される」としている。


■高齢者の消費が中心に

また、高齢者特有の消費が引き起こす産業構造の変化に言及。総務省の「全国消費実態調査」を用いて、世帯主が60歳以上の「高齢者世帯」が他の世帯に比べて支出割合が多い15の品目をグラフで示した(下グラフ)。


 消費額は、全国消費実態調査の1世帯当たりの消費額に国勢調査の世帯数を乗じて算出。
それによると、最多はバリアフリーや老朽化対応などリフォームに関連する「工事その他のサービス」で4 兆7,280億円。公的負担を含めた「介護サービス」が4兆2,390億円、レジャーなど「パック旅行費」が2 兆4,390億円、「生鮮魚介」が1 兆9,170億円などと続く。

サプリメント剤型の健康食品を中心とする「健康保持用摂取品」は7,390億円で、15品目中で8 位となった。
15年前の1999年の「全国消費実態調査」を用いて、高齢者特化係数が高い消費財等を確認しても、上位は2014年調査とほとんど変わらず、安定していることがわかったという。白書では、「近年、高齢者層の消費がマクロの消費に占める割合が高まっている中で、我が国全体の消費品目の選好が高齢者特有の内容をより反映した形に変化している可能性がある」と分析している。

一方、こうした高齢者の増加による需要の変化に対し、労働のシフトが円滑に行われない場合、人手不足が生じ、「それが財やサービスの供給を制約する可能性がある」ことを指摘している。