2016年10月12日 18:54

 中国資本「日本の健食メーカー買います」日本側の本音は?

輸入販売にとどまらず、海外企業の買収に動く中国資本。一般貿易と越境ECとのバランスに腐心する日本企業。また、越境ECを支援する事業者の狙いはどこにあるのか。各方面の声を追った。

 「OEMの対応が遅いことに不満が高まっている」── そう語るのは、中国の某投資企業幹部。中国では健康食品や化粧品で日本製品の人気が高く、単なる輸入販売にとどまらず、中国側が現地のニーズに合わせた商品のOEMを日本企業に依頼する場合もある。

しかし、OEMの対応に不満も出てきており、「買収した方が早い」といった声もあるという。中国資本のみならず、「世界的なファンドが日本の健食メーカーに目をつけている」との情報も。

中国でも人気の高い「マイクロダイエット」は、もともとサニーヘルス㈱が100%出資する現地法人が中国での販売を行っていた。しかし昨年中国資本が買収。その後、中国資本による現地総代理店は、現地の委託先工場で成分を調整し、甘みを抑えた設計に変えた。

今年8 月までに、すでに4 万箱を仕入れており、今月にはさらに5 万箱の仕入れを予定している。プロモーションにも注力し、来年の目標として「販売20万箱を目指す」(現地関係者)という。「エステやフィットネスブームが追い風」との分析もある。

これは現地法人を買収した例だが、冒頭で引用した投資企業幹部によれば、「海外の工場を買収することも考えている。実際に韓国の某健食メーカーの買収準備を進めており、将来的には日本の工場を買収することも考えている」という。日本側にとっても中国資本を導入することで、より進出が容易になる部分もある。

サニーヘルスの事例にみられるように、現地での販売網に乗せやすいことや、現地消費者のニーズを吸い上げやすいことが挙げられる。日本人関係者は、「感覚の違いもあり、自分たちだけでは難しい」とも語る。

 中国進出については、日本企業の失敗事例も多く報告されており、越境ECなどで再挑戦を試みる企業も出ている。そのような状況の中で、日本企業の買収という逆の狙いが、スピード感もあり、巨大な中国市場に向けた投資としては中国サイドのメリットも大きい。急成長を遂げる中国市場、サプリメントの安全性について信頼度の高い日本企業。伸び悩む健康食市場の買収に向け、厖大な中国資本が動き出している。

もっとも海外進出を目指す企業にとっては、越境ECはコストとリスクをおさえたテストマーケティングツールとして有効だ。ニーズが十分にあると判断できた時点で、現地法人なり代理店を設けて、より規模の大きい一般貿易へと満を持して移行することが可能になるからだ。中小機構でも、新規に越境ECを始める事業者に補助金を出すなどの支援を進める。