2017年1月11日 15:25
 

■タイトル
シンガポールHSAが医薬品成分 (グリベンクラミドなど) を含む製品に注意喚起 (161226)

■注意喚起および勧告内容
2016年12月22日、シンガポールHSA (Health Science Authority) が医薬品成分 (グリベンクラミドなど) を含む3製品 (下記の一覧参照:写真はシンガポールHSAウェブページより加工転載) に注意喚起。当該製品との関連が疑われる健康被害が3件報告されている。シンガポールHSAは使用している場合はすぐに医療機関を受診するように勧告。

製品名写真検出された医薬品成分
Ananda Thukha Remedy for Diabetesグリベンクラミド
ヨヒンビン
1 Day Dietシブトラミン
Bee Brand Qi Li Xiang
(蜜蜂牌七里香)
デキサメタゾン

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■解説
当該製品を検査したところ、医薬品成分が検出された。当該製品との因果関係が疑われる健康被害が、それぞれ1件ずつ報告されている。


・糖尿病の60代女性が、友人の勧めで、糖尿病の根治治療を謳って小売店で販売されていた「Ananda Thukha Remedy for Diabetes」を購入し、約3ヶ月間使用したところ、のどの痛みと疲労感を生じて医療機関を受診。顆粒球減少症と診断され、約2週間の入院治療を要した。


・30代女性が、100%ナチュラルな痩身製品としてインターネットで販売されていた「1 Day Diet」を2週間足らずの期間使用したところ、呼吸障害、心拍数増加、掌の多汗を生じた。


・50代男性が、疼痛緩和を目的に、家族が海外で購入した「Bee Brand Qi Li Xiang」を約1ヶ月間使用した後、使用を中止したところ、血圧およびコルチゾール濃度の低下を生じた。

シンガポールHSAは、「Bee Brand Qi Li Xiang」を使用している場合はステロイドの離脱症状を防ぐため中止せず、すぐに医療機関を受診するように、「Ananda Thukha Remedy for Diabetes」、「1 Day Diet」を使用している場合はすぐに使用を中止して、体調に異変がある場合には医療機関を受診するように勧告。


■関連成分
グリベンクラミド (glibenclamide)

糖尿病治療薬 (経口血糖降下薬) で、医師による処方が必要。重大な副作用として低血糖、無顆粒球症、溶血性貧血、肝炎、肝機能障害、黄疸、その他の副作用として過敏症、吐き気、胃腸障害などが知られており、用法・用量や使用上の注意に特に留意すべき医薬品。
通常使用量は1.25~2.5 mg/日、最大10 mg/日とされている。

ヨヒンビン (yohimbine)
ヨヒンベ (yohimbe,アカネ科のPausinystaliayohimbe、西アフリカ原産の高さ30 mになる常緑性の木) の樹皮に含まれる主要なアルカロイド。ヨヒンビンは劇薬であり、妊婦・授乳婦または小児は使用するべきではなく、専門家の指示のもと以外では使用してはいけない成分。日本ではヨヒンベ樹皮が
「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」の扱いとなっている。
【適応】老衰性陰萎、衰弱性射精、神経衰弱性陰萎 等
【副作用】発疹、発赤、めまい、発汗、虚脱感 等

シブトラミン (sibutramine)
シブトラミンは、1997年に肥満抑制薬としてアメリカFDAの許可を受けたが、日本では未承認。副作用として血圧上昇および心拍数増加などが報告され、心臓病の方は服用を避けたほうがよいとされている。アメリカ国内ではFDAの許可後、2003年8月までに54例の死亡事例 (うち30例は心血管が原因) が報告された。2005年8月、FDAはシブトラミンの使用停止に関する消費者団体の
請願書に対し、シブトラミンの使用に細心の注意を呼びかけ、その安全性を監視することにより、引き続き医薬品として承認していくことを公表した。しかし、心血管疾患歴のある患者では心血管疾患再発リスクが高くなるという欧州で実施されたSCOUT試験 (Sibutramine Cardiovascular OUTcome Trial) の結果をうけ、2010年10月、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでメーカーによる任意回収が決定。開発したメーカーはすでに販売・流通を中止している。2010年11月、インド医薬品規制当局 (Drugs Controller General of India、DCGI) も販売を禁止した。

デキサメタゾン (dexamethasone)
抗炎症作用が強く、作用の持続時間もステロイドの中で最も長い薬物。抗炎症や免疫抑制に使用されるが、糖尿病やムーンフェースなどの副作用が起こる可能性がある。連用後、急に服用を中止すると重篤な離脱作用が起こることがあり、連用後の服用中止時には、徐々に減量するなど注意が必要な医薬品。

■関連情報
シンガポールHSAウェブページ (2016年12月22日、英語) →
「HSA Alerts Public to Three Adulterated Products Which Caused Serious Adverse Reactions and Led to One Person Being Hospitalised」
外国製健康食品の入手や個人輸入等についての注意事項等→「健康食品や医薬品、化粧品、医療機器等を海外から購入しようとされる方へ (厚生労働省作成2012年版) 」