2017年1月11日 15:32

                          

サプリメントからカルシウムを摂取すると、動脈にプラークが蓄積し、心臓にダメージを与えるリスクが高まる可能性があるという。反対に、カルシウムが豊富な食品を多く摂る食生活には心臓の保護効果があるとのこと。米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究。

研究者らによると、今回の調査結果はカルシウムサプリメントとアテローム性動脈硬化症について観察したものであり、因果関係の証明には至らないという。

とはいえ、サプリメントの潜在的有害性について増えつつある科学的懸念をさらに増すものだとし、カルシウムサプリメントを利用する際には、知識のある医師の診察を受けるよう訴えている。

米国では成人の43%がカルシウムを含むサプリメントを利用している。「ビタミンやミネラルのサプリメント、特にカルシウムは骨の健康のために摂取されており、多くの国民はたくさん摂るほど良いと思っています」と、研究者のマイコス医師は話している。

「しかし、私たちの研究では、サプリメントの形態での過剰なカルシウムは、心臓や循環器系の害となるという証拠の根幹になるものです」

先行研究から特に高齢者においては、カルシウムサプリメントを摂取しても、そのカルシウムが骨格までたどりつかなかったり、尿に排出されなかったりした結果、身体の軟部組織に蓄積されていると考えられている。

そのため今回の研究者らは心臓や循環器系においてカルシウムがどのような影響を持つのか興味を持っていたという。

なお、これまでに、加齢にともなってカルシウム系プラークが大動脈などの動脈に蓄積し、血流を妨げて心臓発作のリスクを高めることもわかっている。

さて今回の研究では、2700人以上を対象に食事アンケートと、CTスキャンを2回(各回の間隔は10年とした)受けてもらった。被験者の年齢は45-84歳、男女比は約半々だった。

食事アンケートでは、どのような食品からカルシウムを摂っているかを訊ねるため120の設問に答えてもらった。他に、薬やサプリメントの摂取状況についても記録した。

一日あたりのカルシウム平均摂取量によって被験者を5群に分けたところ、最も摂取量の多い群(1400mg/日)は最も少ない群(400mg/日)よりも、冠動脈石灰化の度合い(カルシウム沈着の目安となる。CT検査で測定)が高くなる可能性が27%少なかった。次に、カルシウムの供給源が食事のみの人と、サプリメントも摂取している人とで、どのような差が生じるかを分析した。

被験者の46%はカルシウムサプリメントを利用していたが、解析の結果、彼らは冠動脈石灰化の度合いが10年間で22%高まったことがわかった。これは心臓病の発症につながることを示唆している。このようなリスクの増加の原因として、研究者は「サプリメントはカルシウム塩を含むこと、または高用量のカルシウムを身体が処理しきれないこと」ではないかとしている。

一方で、食事由来のカルシウム摂取量が最も多かった群の人たちは一日平均1022mg以上だったというが、彼らに心臓病リスクの増加はみられなかったとのこと。研究者は「この証拠によれば、カルシウムの豊富な食品を含む健康的な食事を摂ることは、何の問題もないばかりか心臓に有益だともいえるでしょう。」としている。

出典は『米国心臓学会雑誌』。