2017年2月20日 12:15
 

 カルシウムサプリメントにより高齢女性の認知症リスクが上昇する可能性があることが、新たな研究で示された。因果関係は明らかにされていないが、カルシウムサプリメントを飲んでいると、脳卒中の既往のある女性では認知症リスクが7倍、脳の白質病変(脳内の血流が妨げられる障害の徴候)のみられる女性ではリスクが3倍になるという。

 研究を率いたスウェーデン、ヨーテボリ大学のSilke Kern氏によると、一部のガイドラインでは、骨粗鬆症予防のために高齢者は1日1,000~1,200mgのカルシウムを摂取するよう推奨しているが、別の研究ではカルシウムサプリメントが女性の心筋梗塞や脳卒中のリスクを上昇させる可能性が示唆されているという。ただし、食品から摂取するカルシウムはサプリメントとは異なり、脳にとって安全であり、むしろ保護する作用もあると同氏は強調している。

 今回の研究は、認知症でない女性700人(70~92歳)を対象として、2000年から5年間追跡した。研究の開始時と終了時に、記憶力・思考力などの検査を実施した。研究開始時に447人に脳のCT検査を実施した結果、71%の人に白質病変が認められた。研究開始時点では、計98人がカルシウムサプリメントを使用しており、既に54人が脳卒中を経験していた。追跡期間中に、さらに54人が脳卒中を発症し、それとは別に59人が認知症を発症した。

 はじめに、カルシウムサプリメントを飲んでいる女性は、飲んでいない女性に比べて認知症リスクが2倍であることがわかった。しかし、さらに分析を進めると、脳血管疾患の徴候(脳卒中の既往または白質病変)のある人が、このリスク上昇に寄与していることが判明した。

 その理由は不明だが、カルシウムは細胞死において重要な役割を担っており、血中カルシウム高値によりニューロンの早期死滅が促進される可能性があると、Kern氏は説明する。過剰なカルシウムが脳血管に何らかの影響を及ぼす可能性もあるという。

 米ラッシュ大学医療センター(シカゴ)のNeelum Aggarwal氏は、カルシウムが脳の化学的性質にも影響する可能性があるとの考えを示す一方、カルシウムだけではなく、複数の栄養素の組み合わせに着目してさらに研究を重ねる必要があると指摘している。

骨粗鬆症は高齢者にとって重大な問題であり、「現時点ではこの論文に基づいて処方が変更されることはないと考える」と同氏は話している。

 サプリメントの業界団体である米国栄養評議会(CRN)のDuffy MacKay氏も、結論を急ぐべきではないと言う。「今回の解析は10年前の観察研究のデータを用いており、元の研究はカルシウム摂取量の評価のためにデザインされたものではない。

さらに、解析にはサプリメント使用者が98人しか含まれておらず、サプリメントの用量や摂取期間、食事からのカルシウム摂取量などの情報が含まれていない」と、同氏は指摘している。

 この知見は「Neurology」オンライン版に8月17日掲載された。