2018年1月21日 16:49

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インフルエンザや風邪といった呼吸器感染症の症状はつらいものだが、特に男性はその症状を大げさに訴える傾向があると感じている医師や女性は多いのではないだろうか。

しかし、男性が呼吸器感染症の症状に弱いのは、ただ弱虫だからではなく、男性は実際に女性と比べて免疫系が弱く、症状が重くなりやすいからではないかとする研究論文が発表された。この論文は毎年ユーモラスなテーマの研究論文を集めることで知られる「BMJ」12月11日オンライン版のクリスマス特集に掲載された。

この論文を執筆したのはニューファンドランド・メモリアル大学(カナダ)のKyle Sue氏。英語圏では軽い風邪の症状でも「インフルエンザに罹った」と騒ぎ立てる男性を揶揄する際に“man flu(男性特有のインフルエンザ)”という言葉がよく使われる。同氏は今回、動物およびヒトの複数の研究をレビューし、“man flu”に科学的根拠があるのか否かについて検証した。

その結果、ある香港の研究では、女性よりも男性の方がインフルエンザによる入院リスクが高いことが示されていた。また、インフルエンザを含む呼吸器疾患を発症した場合の合併症リスクは女性と比べて男性で高いことを示した研究もあった。

さらに、複数のマウスの研究において、男女の性ホルモンの違いがインフルエンザの症状の重症度に関係している可能性が示されているほか、ヒトの研究でも男性と比べ女性ではインフルエンザ発症時の免疫反応が強いこと、また男性ホルモンの分泌量が多いと免疫反応が抑制されることが示唆されているという。

Sue氏は、さらに詳細な検討が必要であることを認めつつも、「男性が呼吸器症状に弱いことには、ある程度の根拠はある」と述べ、「インフルエンザの治療も性差を考慮する必要があるかもしれない」との見方を示している。

さらに、同氏は「女性よりも男性の方が若いうちに心血管疾患を発症しやすいとして、男性には早期から心血管疾患のスクリーニングが実施されているにもかかわらず、なぜ男性が風邪やインフルエンザの症状でより苦しんでいると問題視されるのだろうか」と疑問を投げかけている。

一方、米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院のEbbing Lautenbach氏は、今回の論文について「われわれが共通して抱いている印象を裏付けるデータが、実際にどの程度あるのかを調べたという点は素晴らしい」と評価した上で、「女性と比べて男性では呼吸器感染症への免疫反応が弱いということは証明されているわけではない」と指摘。

性差が本当に存在するのか、もし存在するならどのような機序で性差が生じるのかについて、今後さらなる研究が必要だと強調している。


More information

There's more on influenza at U.S. Centers for Disease Control and Prevention.

SOURCES: Kyle Sue, M.D., clinical assistant professor, family medicine, Health Sciences Centre, Memorial University of Newfoundland, St. John's, Canada; Ebbing Lautenbach, M.D., M.P.H., associate professor, infectious diseases, and chief, division of infectious diseases, Perelman School of Medicine, University of Pennsylvania, Philadelphia; Dec. 11, 2017, BMJ

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