2018年4月22日 14:16
「クルクミン」の画像検索結果

クルクミンを不当に批評した新聞記事

4月22日付のニューヨーク・タイムズ紙に、クルクミンのサプリメントを批評した記事がありました。クルクミンはフィトケミカルの一種で、ターメリックの明るいオレンジイエローの色素です。

その記事の冒頭では、クルクミンに抗酸化特性・抗炎症特性・抗ガン特性ならびに神経保護特性があることが実際に述べられていました。その次には、取材したライナス・ポーリング研究所の科学者の発言として、クルクミンが人にとって有益であると主張できるほど現在のエビデンスは十分でない、という言葉が載っていました。

これに続けて記者は、「クルクミンの生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)は極めて低く、これは、人の体内にあまり長く留まらないという意味である…」と書いていました。

しかし、「生物学的利用能が低い」とは、こうした意味ではありません(腸管からの吸収率が低い、または、効果的に細胞に取り込まれない、または、機能を抑制する他の分子と結合するという意味です。) 吸収率が悪いにもかかわらず、動物実験ではクルクミンを餌に混ぜて投与していました。

この記事によると、動物実験の場合、クルクミンは「大腸炎を緩和し、関節リウマチの過剰な免疫反応を抑え、外傷性脳損傷における神経炎症を軽減する」可能性があり、「小規模な臨床試験の結果、関節リウマチの硬直と腫脹の軽減において非ステロイド性抗炎症薬と同等の効果があることがわかっており、潰瘍性大腸炎の軽症化および突然の再発の低減に用いられる一部の標準薬よりも効果があった」ということです。

しかし、
「生物学的利用能の問題は、他の場合なら重要ですが、クルクミンが少量で効果があるなら、ほとんど重要ではありません。

多数の臨床試験や動物実験の結果から見て、少量で効果があるようです。仮に、1%しか利用されないとしても、1 mgで効果がある場合、100 mg摂れば臨床効果が得られることになります。一般的な用量は、標準エキスの形で300~500 mgです。

こうした半科学的な見解からは、クルクミンがどのような方法で動物に投与されたのかわかりません。注射によってではなく、餌や水に混ぜて与えたとすれば、生物学的利用能が低くても生理学的効果が妨げられなかったことの証明となるでしょう。

誰もが規模の大きい研究を好みますが、その資金を出そうとするのは誰でしょうか? そうでなくても、リスクがないのなら、なぜ治療や予防に利用しないのでしょうか? 食事でよくカレーを食べる所ではアルツハイマー病の発症率が低く、クルクミンがその原因の一つとなっているとも考えられます。

関節リウマチの薬は、重篤な副作用を引き起こし、多数の死者をもたらします。安全な代替策があるのなら、少なくとも試す価値はあります。しきたりにとらわれない療法を進んで取り入れている医師は、マスコミ界や医学界で非薬物療法への反感がはびこっていることを知っています。」

2006年に、ある研究グループが、潰瘍性大腸炎患者89人を対象とした臨床研究について発表しました。被験者は、試験の開始時点でこの病気が鎮静期にあった患者で、その半分にクルクミン1,000 mgが1日2回与えられ、残りの半分にはプラセボが与えられました。
6カ月後の時点で、プラセボグループでは20%に再発が見られましたが、クルクミンを与えたグループでは4.6%にしか見られませんでした。

(Hanai H, et al., Curcumin maintenance therapy for ulcerative colitis: randomized, multicenter, double-blind, placebo-controlled trial. Clin Gastroenterol Hepatol. 2006 Dec;4(12):1502-6.)

別の研究で、クルクミンが豊富に含まれているカレー食による肺機能の改善効果を調べたものがあり、習慣的な喫煙者と喫煙経験者では改善が見られました。ただ、非喫煙者にて見られた改善はごくわずかでした。
(Ng TP, et al., Curcumin-rich curry diet and pulmonary function in Asian older adults. PLoS One. 2012;7(12):e51753. doi: 10.1371/journal.pone.0051753. 電子出版:12月26日)

クルクミンには、抗炎症特性と抗関節炎特性(関節炎の緩和効果)があることがわかっています。関節リウマチ患者45人を対象とした無作為化試験にて、クルクミン(500 mg)を投与するグループ、ジクロフェナク(非ステロイド抗炎症薬)を投与するグループ、および、その2つを併用するグループに分類して試験を行った結果、最も改善率が高かったのは、クルクミンを投与したグループでした。
(Chandran B, Goel A, A randomized, pilot study to assess the efficacy and safety of curcumin in patients with active rheumatoid arthritis. Phytother Res. 2012 Nov;26(11):1719-25.)

その他にも、クルクミンには、慢性歯肉炎の治療において殺菌性洗口液のクロルヘキシジンと同程度の効果をもたらす可能性があること、また、乳ガン患者の放射線皮膚炎を軽減する可能性があることや、大うつ病の症状を軽減する可能性があることが他の研究で示されています。大うつ病への効果を示した研究については、以前に紹介しています。

【コンクリュージョン】
カレー料理を食べる他にクルクミンのサプリメントも摂ることを、新聞記事によって思いとどまることはありません。

クルクミンによるこうした実際の効果や潜在的な効果は本当であり、1日6,000 mgまで摂っても副作用はありません(ただし一部の研究では、ごく一部の被験者が消化器の不調を報告しています)。

ニューヨーク・タイムズの記事で明確にしているのは、クルクミンの効果を得るには比較的大量に摂らなければならない、ということだけです。