2018年4月22日 15:02

中国の健康食品市場急拡大、慢性疾患患者の急増でサプリメントが牽引

(画像: TPCマーケティングリサーチの発表資料より)

Cマーケティングリサーチは6日、中国の健康食品市場について調査結果を発表。16年の中国健康食品市場は前年比6.6%の2,100億元となった。健康意識の高まりや高齢化の進展、慢性疾患者の増加を背景に急拡大を続けている。

 分野別では、サプリメントが前年比6.3%増の1,360億元。構成比全体の64.8%を占め、錠剤や粉末飲料、機能性食品まで幅広く網羅することで市場規模を拡大させている。なかでも健康志向の高まりから、免疫力増強を謳う商品や、ビタミンを主成分にしたものが消費者に支持されているという。

 飲料も前年比7.2%増の740億元と拡大。肉体疲労緩和を目的とした保健酒やエナジードリンクといった機能性飲料が市場を牽引している。若い女性を中心に、栄養摂取により内側から健康を目指す「美容ドリンク」の拡販が進んだことも大きいという。

 チャネル別ではスーパーや百貨店、ドラッグストアによる伝統的な店頭販売が6割を占めるが、通信販売によるシェア獲得が著しい。前年比17.9%と大きく伸長し、スマートフォンなどの普及により若年層の需要が増加しているという。

 高齢化が進む中国の健康食品市場はネット販売も続伸していることから、海外企業にとっても非常に魅力的な市場になっている。ただし、早期参入した外資ブランドが確固たる地位を築いていることや、海外ブランドと提携したローカル系企業の続出により市場がレッドオーシャン化しつつあるという。

 海外メーカーが自社製品をネット販売する越境Eコマースも目立ち始め、日本でもエーザイが17年に「美 チョコラ コラーゲン」の販売を開始。エーザイでは14年よりチョコラBBブランドの販売を中国でスタートしており、中国で高まるヘルスケアのニーズにいち早く応えてきた。

 その他の日本企業では、大正製薬のリポビタンDが「力保健」として中国主要都市で販売されるなど存在感を発揮している。とはいえ、日本企業は堅調な国内市場を第一の主戦場として注力していることから、海外展開は大きく出遅れていると言われている。

 中国はここ数年、慢性疾患患者が急増していることから、政府も一部地域にて健康食品を医療保険の対象にするなど改革に乗り出している。また、多くの規制緩和に動き出していることから業界全体としても更なる拡大が期待されている。

 一方で、中国では低待遇と劣悪な環境により医師の地位が非常に低いことも見過ごしてはならない。医師の資格を持っているにも関わらず、金融業やIT系企業に勤務する人材は少なくない。医師に高い社会的地位が補償されていない中国における医療の質は、日本の30年前の水準と等しいとも言われている。

 こうした背景から高い医療水準の望めない中国の生活者が、日常より健康食品に傾倒する向きもあるのかもしれない。その他、所得水準の向上や医療費の増大など様々な影響が考えられることから、中国の健康食品市場は当分の間は拡大が予想されている。