先週末、所属するJASDI-NET委員会で、妊婦・授乳婦さんへのカウンセリングで有名な虎ノ門病院の林昌洋先生の講演がありました。
メディアでもご活躍の林先生は、とっても話し方のやさしい、ダンディな先生でいらっしゃいます。今回は、妊婦・授乳婦への服薬カウンセリングと医薬品情報とういう題で話を聞きました。
1960年代に起こったサリドマイド事件から、医療従事者も妊婦にも薬の催奇形性に関する認識が普及し、むしろ過剰に不安を抱き始めました。そこで、林先生は婦人科医と共同で20年前から「妊娠と薬相談外来」をはじめられたそうです。
以下のことを前提に前向きな話の持っていき方が、大切なようです。
「ふつうに妊娠した人でも、催奇形性の割合は、、、2~3%。そう、100人に2,3人に催奇形性が生まれる」ということです。
でも、その中には生きていく上で問題がないことまで含まれているので、大奇形はさらに少なくなります。
その原因は、遺伝的なもの25%、母体の環境によるもの(薬の影響では1%以下)10%、不明が65%です。
だからカウンセリングでも、普通でも2~3%奇形が起こることを理解した上で、お薬のリスクを話し始めるそうです。服薬指導の中で、カウンターで質問された時には、まず添付文書の情報を説明しますが、もっといい情報を検索したり、メーカーに問い合わせてみてデータを提示することも必要とのこと。
実際、添付文書をみてみると・・
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
[動物実験(マウス、ラット、ウサギ)で催奇形性が報告されている]
という記載は多々。動物実験を判断する際、人の曝露量と動物の曝露量を比較し、作用機序を理解して有益な実験方法なのかをチェックしたほうがいいとのこと。
やはり人のデータを参考にしようということでした。
ただ、「ヒトで催奇形性・胎児毒性を示す証拠が報告されている薬物」は要注意で知っておいたほうがよさそうです。
アミノグリコシド系抗結核薬、ACE阻害薬、ARB、チガソン、カルバマゼピン、シクロホスファミド、タナゾール、テトラサイクリン系、トリメタジオン、バルプロ酸ナトリウム、NSAIDs、大量ビタミンA、フェニトイン、フェノバルビタール、サイトテック、メソトレ、ワルファリン
授乳中の場合は、、、
この式を知っておくと便利とのこと
乳児摂取量(mg/Kg/日)=Cave X M/P X 哺乳量(mg/Kg/日)
Cave : 授乳中の平均血漿中薬物濃度
M/P : 母乳と母体血中薬物濃度比
また、LactMed でも情報は簡単に入手でしますとのことでした。
あまりに充実した講義内容で、ブログではお伝えきれませんね^^;
じほうから、林先生の「授乳婦と薬」の最新版が出版される予定ですから、興味のある方はそちらを購入してくださいませ。
私もナセラで、授乳婦さんへのカウンセリングをしていて、母乳不足や悪露で悩んでいるお母さんたちにハーブティーを紹介しています。扱っているハーブティーの中には、フェンネルやキャラウェイが入っているのですが、母乳プロブレムが改善される同時に、乳児にそのハーブが移行し、便秘が改善されたりするのです。(母体~母乳~乳児につながっていることを実感する瞬間ですね!)
これらのように、有益の方向にあればいいのですが、薬は注意が必要ですね。