プロフィール
名前:酒井美佐子
平成4年東邦大学薬学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院にて病棟臨床薬剤師として9年間勤務後、カナダアルバータ大学・アメリカコロラド州立大学病院統合医療センターの研修を経て、平成15年統合医療ビレッジ薬剤部長。平成20年4月よりビオセラクリニック薬剤部長。日本ホメオパシー医学会認定薬剤師。ハーバルセラピスト。
大学(東京薬科大学、東邦大学、城西国際大学)や薬剤師卒後教育講座、一般向け講座にて、薬剤師の立場からサプリメントやハーブの正しい摂取方法などの普及につとめる。
薬剤師向け雑誌「日経ドラッグインフォメーション」連載、「ファーマネクスト」(じほう)、「デトックス・ダイエット」(幻冬舎)著書、「3日で毒素排出」(イーストプレス)監修など。

先週末、所属するJASDI-NET委員会で、妊婦・授乳婦さんへのカウンセリングで有名な虎ノ門病院の林昌洋先生の講演がありました。

メディアでもご活躍の林先生は、とっても話し方のやさしい、ダンディな先生でいらっしゃいます。今回は、妊婦・授乳婦への服薬カウンセリングと医薬品情報とういう題で話を聞きました。

1960年代に起こったサリドマイド事件から、医療従事者も妊婦にも薬の催奇形性に関する認識が普及し、むしろ過剰に不安を抱き始めました。そこで、林先生は婦人科医と共同で20年前から「妊娠と薬相談外来」をはじめられたそうです。

以下のことを前提に前向きな話の持っていき方が、大切なようです。

「ふつうに妊娠した人でも、催奇形性の割合は、、、2~3%。そう、100人に2,3人に催奇形性が生まれる」ということです。

でも、その中には生きていく上で問題がないことまで含まれているので、大奇形はさらに少なくなります。

その原因は、遺伝的なもの25%、母体の環境によるもの(薬の影響では1%以下)10%、不明が65%です。

だからカウンセリングでも、普通でも2~3%奇形が起こることを理解した上で、お薬のリスクを話し始めるそうです。服薬指導の中で、カウンターで質問された時には、まず添付文書の情報を説明しますが、もっといい情報を検索したり、メーカーに問い合わせてみてデータを提示することも必要とのこと。

実際、添付文書をみてみると・・

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

[動物実験(マウス、ラット、ウサギ)で催奇形性が報告されている]

という記載は多々。動物実験を判断する際、人の曝露量と動物の曝露量を比較し、作用機序を理解して有益な実験方法なのかをチェックしたほうがいいとのこと。

やはり人のデータを参考にしようということでした。

ただ、「ヒトで催奇形性・胎児毒性を示す証拠が報告されている薬物」は要注意で知っておいたほうがよさそうです。

アミノグリコシド系抗結核薬、ACE阻害薬、ARB、チガソン、カルバマゼピン、シクロホスファミド、タナゾール、テトラサイクリン系、トリメタジオン、バルプロ酸ナトリウム、NSAIDs、大量ビタミンA、フェニトイン、フェノバルビタール、サイトテック、メソトレ、ワルファリン

 

授乳中の場合は、、、

この式を知っておくと便利とのこと

乳児摂取量(mg/Kg/日)=Cave X M/P   X  哺乳量(mg/Kg/日)

Cave : 授乳中の平均血漿中薬物濃度

M/P : 母乳と母体血中薬物濃度比

また、LactMed でも情報は簡単に入手でしますとのことでした。

 

あまりに充実した講義内容で、ブログではお伝えきれませんね^^;

じほうから、林先生の「授乳婦と薬」の最新版が出版される予定ですから、興味のある方はそちらを購入してくださいませ。

 

私もナセラで、授乳婦さんへのカウンセリングをしていて、母乳不足や悪露で悩んでいるお母さんたちにハーブティーを紹介しています。扱っているハーブティーの中には、フェンネルやキャラウェイが入っているのですが、母乳プロブレムが改善される同時に、乳児にそのハーブが移行し、便秘が改善されたりするのです。(母体~母乳~乳児につながっていることを実感する瞬間ですね!)

これらのように、有益の方向にあればいいのですが、薬は注意が必要ですね。

IMG_2872.JPG
 

 
    

2009年1月26日 21:12 | コメント(0) | トラックバック(0)