昨年、日経DIの「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント 」で有名な東京大学の澤田康文先生の講演を聞きました。
医薬品と食品の相互作用のメカニズムについての話でしたが、わかりやすく、簡潔で、テンポいい講義にとても感動した経験があります。
澤田先生のされているお仕事に、医薬品適正使用のための情報提供と育薬研究があります。NPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター のサイトにて薬剤師は無料登録ができます。
この薬剤師間情報交換・研修システム「アイフィス」に登録すると、メルマガで、健康食品と医薬品の相互作用の事例も配信されてきます。ケーススタディのような形式で送られてきますので、おもしろいです!
MSA受講者もそうでない方も、とても参考になりますので、ぜひぜひ登録してみてください。
P.S. 水分補給の大切な季節です。薬剤師の先生方に、スポーツ飲料のカロリー情報を。。
ポカリスエット 135キロカロリー/500ml
アクエリアス 95キロカロリー/500ml
大塚製薬 OS1 50キロカロリー/500ml
味の素アクアソリタ 11.5キロカロリー/125ml
患者さんの疾患、症状によって、スポーツ飲料も大きな差がありますね。
糖尿病・メタボ・癌患者・・・・・すすめる時も、注意したほうがよさそうです。
日本では、がん患者さんの半数以上が補完代替医療(サプリメント・鍼灸・マッサージなど)を利用している現実がありますが、医療者がなかなか理解を示さないため、医療者に隠れて利用しているケースが多くあります。
実際、アメリカでは、補完代替医療を用いる患者が多いという調査結果を受け、医療者が補完代替医療の知識を持ち、理解を示すべきという方向に変わってきているといいます。
日本の医療者においても、今後、補完代替医療に対して知識を持ち、治療に役立てる方向で見直しが進むことが期待されています。
でも、補完代替医療・・・の中には、たしかに怪しいもの(サプリや施術)、スピリチャル的なものなどが含まれるのも事実。
なかなか一般の医療者には受け入れにくいものです!
そこで、参考になるのが、「がんの補完代替医療ガイドブック」第2版です。
このガイドブックは、インターネットを介して誰でもダウンロードして読むことができ、所先生や今年のカナダ大使館で行われなメディカルサプリメントフォーラムでお話しされた金沢大学の大野先生らの研究成果も盛り込まれており、患者が補完代替医療をどう受け止めているかも記載されています。
また、海外で科学的根拠があると認められている補完代替医療のリストも追加されていますので、必見です。
先日、大学病院で補完代替医療外来をしている大野先生とお目にかかりましたが、患者さんはサプリメントをたくさん持参し、先生からエビデンスレベルの話を伺うそうです。大学病院で、このような外来ができたことは、私のようなサプリメントや自然療法を扱っている薬剤師にとっては、世の中前進している~~と励みになります♪
7月13日、第4回日本腫瘍学会学術大会が都内で開かれ、ヘシャック先生(元カナダ・アルバータ大学教授)とケスラー先生(オーストリア腫瘍学会会長)が基調講演で招かれ、がんに対する補完代替医療とサプリメントの最新のエビデンスということでお話がありました。
今回は、約60名の医師が参加し、行われました。
ヘシャック先生からは、NHP(natural health products)の定義、がんに対する有効性、化学療法や放射線療法中の使用リスク、がんの予防・治療における大豆・リコピン・緑茶・セレニウム・ヤドリギ・レイシ・ビタミンC・カルシウム・ビタミンD・サメ軟骨などについての話がありました。
サプリメント素材ごとに、系統的レビュー、メタアナリシス、臨床試験の結果をまとめ、現段階での評価を示されていました。
また最後に、 NHPの有効性をより理解するためには体内での影響を実証するための新しいデザインの研究が必要で、具体的に、腫瘍の進行を促進させる複数の生化学的おようび生理学的経路、血管新生、上皮増殖因子受容体、Her-2/neu遺伝子、COX-2、NF-κB転換因子、プロテインキナーゼなどを対象とし、同時に正常細胞組織に対する毒性を最小限にしているかどうかの確認も研究していかなければならないことを総評で述べられていました。
(今回の詳しい内容は、MSA認定の方には、資料があとで配布されるようです)
また、ヨーロッパのがん補完代替療法の第一人者であるケスラー教授からは、がん=炎症である。また、がん患者は、感染を起こしている場合が多く、「歯周病」「白癬」など、がんの治療ばかりフォーカスするのではなく、同時にこれらの治療も行うこと、またがん患者の食事については、特に「炭水化物」「砂糖」の過剰摂取が再発リスクを上げるため、そのような食事をした場合は、同時にグルコマンナンなどの食後過血糖を抑えるサプリを利用するといいことなど話されました。
私も、臨床の場で、がん患者さんと接することが多いわけですが、患者さんは食事摂取カロリーが少ないからといって、わざわざケーキなどの甘いものを食べている方も少なくありません。そのような患者さんには、ビタミン・ミネラル・脂肪酸・タンパク質が考慮された濃厚流動食などをアドバイスすることが多くあります。
がん患者さんの治療は、3大療法(化学療法、手術、放射線)だけではないことを改めて感じました。
JAMA誌2008年6月25日号にこんな記事を見つけました。
「Effectiveness of home blood pressure monitoring, Web communication, and pharmacist care on hypertension control: a randomized controlled trial.」こちらから
アメリカ、ワシントン州で、
薬剤師によるインターネットを利用した患者支援の血圧モニタリング、血圧コントロールのケアを検討したランダム化試験の結果、
「インターネットによる薬剤師の管理は血圧コントロールを改善する」 と報告している。
(方法)インターネット接続可能な25~75歳の参加者778例。2005年6月から2007年12月にかけて、ネット支援は患者専用ウェブサイトを利用して行われた。
参加者は、①一般治療を受けるグループ ②自宅で血圧モニタリング+患者ウェブサイトを利用するグループ ③自宅での血圧モニタリング+患者ウェブサイト利用+インターネットを通じた薬剤師の管理支援を受けるグループに、ランダムに割り付けられた。
主要評価項目は、血圧140~90mm Hg未満にコントロールできた患者比率と、12ヵ月間の収縮・拡張期血圧の変化とした。
(結果)778例のうち730例(94%)が、追跡調査を完了し、正常血圧(140~90mm Hg未満)の比率は、①一般治療を受けるグループの31%と比べ、②自宅で血圧モニタリング+患者ウェブサイトを利用するグループは36%で、有意な上昇は確認されなかった(P=0.21)。
しかし、③自宅での血圧モニタリング+患者ウェブサイト利用+インターネットを通じた薬剤師の管理支援を受けるグループは56%で、①一般治療を受けるグループ(P<0.001)、、②自宅で血圧モニタリング+患者ウェブサイトを利用するグループ(P<0.001)と比べ高い改善が確認された。
(結語)インターネットの専用患者ウェブサイトを通して行われる情報提供と薬剤師による管理は、高血圧患者の血圧改善に役立つ。
日本でも、メタボ検診がはじまり、より患者さんとコミュニケーションが必要な時代になってきました。
今までは、医師主導で、行われてきましたが、医師は診断や治療で本当にお忙しいのです!患者さんのフォーローは私たち薬剤師にも重要なお仕事なんだ~~と思わせてくれる、興味深い論文でした!
私の勤めるビオセラクリニックでも、「メタボナビ」という健康コンシェルジュサービスをインターネット上で行えるシステムが導入され、院内の患者様は無料で登録し、利用可能になりました。
ビオセラクリニックの健康コンシェルジュは、3名。
管理栄養士の徳田先生。
薬剤・メディカルサプリメント担当は、私。
それから、ストレスマネージメントをしてくれる精神カウンセラーの先生。
導入したてのシステムですが、使い勝手や院内でのメリットなどなど、また報告していきたいと思います。
今週末、日本腫瘍学会での基調講演( 7月13日 第4回日本腫瘍学会学術集会 )のために、ヘシャック先生が来日します。
日本腫瘍学会は、4年前にドイツおよびオーストリア腫瘍学会の協力を得て設立し、先進ヨーロッパでの統合医療を含めた最新治療法情報伝えている学会で、医師が中心です。
学会の研修プログラムでは、免疫療法、サプリメント、ホルモン療法、サイコオンコロジーなどが必須となっています。
日本でも、ドイツやオーストリアと同様に統合医療を取り入れた医療施設が増えてきたこともあり、がん患者さんのQOLがこれまで以上に高められるように、ヨーロッパにおける統合医療を学ぶ場でもあります。
今回、ヘシャック先生は、「癌に対するサプリメントのEBM」について講演されます。
日本では、がん患者さんの半数以上が何らかのサプリメントを摂取しており、その内容は、実に様々です。いわゆるキノコ系と言われる 「アガリクス」「レイシ」「メシマコブ」「マイタケ」「シイタケ」などのβグルカン、フコイダンでも 「高分子」「超低分子」「混合」、サメ系と言われる 「サメ軟骨」「サメ肝油」「サメ脂質」、抗酸化物質、核酸(DNA・RNA)、タヒボ(イぺ)、ゲルマニウムなど多岐にわたっています。
患者さんの購入方法は、インターネット、薬局、通信販売、ネズミ講、クリニックからの処方などいろんなパターンがあります。
クリニックからの処方、薬局から以外の購入方法は、素人が素人に勧めるわけですから、その患者の状況(手術前なのか、化学療法するのか、放射線をしているのか、薬は飲んでいるのか、アレルギー歴はあるのか、そもそもどんな癌なのか)を知らずに、「これは、いいものだから飲んでみて!飲めば飲むほど効くのよ!」と言うわけです。
さらに危険・・・・
がんの臨床試験は、それ自体が非常に難しいため、エビデンスというと、「ほぼない!」のが現状でしょう。
でもその中でも、海外で行われている臨床試験に基づいて、ヘシャック先生からお話があると思います。
私も、現在、クリニックの中で、何名かがん患者さんを受け持ているので、今後の患者さんへの情報提供のためにも、講演を楽しみにしています。